多葉喜 庭園“霊泉湧庭”

Tabaki Garden, Echizen, Fukui

越前・武生で明治時代に創業、100年以上続いた老舗料亭がカフェ/旅館として再生。旧料亭建築から庭園“霊泉湧庭”を眺めながらの水羊羹が絶品!

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和宿 多葉喜庭園“霊泉湧庭”について

「多葉喜」(たばき)は福井県越前市の中心市街地・武生で明治時代中期に創業した旧料亭。明治時代〜昭和時代に整えられた料亭建築と庭園を活用する形で、2024年より一棟貸し宿『和宿 多葉喜』『カフェたばき』がオープン。(※庭園はカフェ利用でも眺めることができます。)

2024年にはNHK大河ドラマ『光る君へ』の主人公・紫式部ゆかりの地としても多くの観光客が訪れた越前市・武生。その玄関口・ハピラインふくい(旧JR北陸本線)・武生駅から徒歩4分と程近く。料亭街の面影を残す一角に建つ重厚な和風建築が「多葉喜」。

料亭としての歴史は古く、1892年(明治25年)の創業。越前・武生屈指の老舗料亭として地域の方に親しまれ、また政財界の要人をこの地で迎える為の迎賓の場を100年以上に渡り担っていたそう。
しかしそんな地域の名料亭も2019年に廃業。そして解体――というプランもあったそうですが、解体の相談を受けた武生出身の建築家・北畑栄(北畑栄建築研究所)さんによって、この100年以上続く貴重な場を残し活用すべく《多葉喜再生プロジェクト》が発足。晴れて2024年、一棟貸し宿とカフェがオープンしました。

その料亭建築は明治時代中期の創業期の建築に昭和時代の増築部を加えたもの。また今回のリニューアルにあたっては、カフェ棟とテラスデッキが新たに加わったり水回りは新しくなっているものの、玄関や客室(書院造りの「百合の間」等)は数寄屋風の意匠…欄間や数寄窓、網代天井などに当時の職人の粋な技と格式高い料亭の雰囲気を体感できます!

そんな多葉喜の玄関に掲げられている書が「霊泉湧庭」。すなわち多葉喜にとっては庭園も重要なポイント。近代以前の武生は湧水池の多い街だったそうで、明治時代に多葉喜が創業した際には、現在も残る「お清水不動尊」に加えて“お清水”=湧水池が残されていたのだそう。その当時は夏場は池に船を浮かべて甘味を食すことで涼を取っていたのだとか。

やがてその湧水を取り入れる形で池泉回遊式庭園が整備され、来店者によって「霊泉湧庭」と親しまれるようになったのだとか。やがて“お清水”は埋め立てられ、この庭園も今回のリニューアルにあたって?枯池(枯山水庭園)へと変化していますが、カフェを含めて全ての部屋から日本庭園の眺望を楽しむことができます。デッキテラスからは“越前富士”日野山の借景も(少し)見える。
そんな水どころにちなんで?「カフェたばき」の人気メニューは「水羊羹」。かつての多葉喜のように甘味で涼を取ることができます。

「多葉喜」という他であまり見たことがない名前の由来は、創業家の二代目高野喜太郎がたばこ(多葉粉)を財を成した所からの引用と、《多くの喜びが葉となって溢れる場所》という意味が込められているのだそう。

庭園から見える蔵や各部屋はギャラリーとしても利用可能で、二階の大広間はイベントスペースとして地域のイベントで活用されています。国指定文化財の庭園も含め、鑑賞できる庭園が多く残る越前武生、旅行で訪れる際はこちらの宿やカフェもぜひ利用して。

(2025年6月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

ハピラインふくい線 武生駅より徒歩4分
福井鉄道 たけふ新駅より徒歩8分

〒915-0069 福井県越前市吾妻町2-23 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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