
後の将軍・徳川家康が築き、大名茶人・小堀遠州も改修を担当した名城"駿府城"。その城跡に京都の大家・中村昌生の茶室が佇む、江戸時代と現代をつなぐ"紅葉山庭園"。
駿府城公園 紅葉山庭園について
「駿府城」(すんぷじょう)は静岡県静岡市にある、戦国大名・今川氏や江戸幕府初代将軍・徳川家康ゆかりの城郭(城跡)。現在は都市公園『駿府城公園』(旧・駿府公園)として市民に広く親しまれており、その一角には平成時代に作庭された日本庭園『紅葉山庭園』(もみじやまていえん)や茶室「雲海」「静月庵」があります。茶室の設計は京都の数寄屋建築の第一人者・中村昌生率いる京都伝統建築技術協会、施工・安井杢工務店。日本100名城や日本の歴史公園100選に選定。
2026年夏に久々に訪れたので改めて紹介。
その歴史について。戦国時代に駿河国を治めた今川氏の居館『今川館』がそのルーツ。今川義元が織田信長に討たれ、今川氏が駿河国を追われた後に入ったのが徳川家康。今日まで伝わる駿府城の築城は家康によって1585年(天正13年)以降に進められたもの。
竣工からまもなく、家康は駿河から江戸(関東)へ移されてしまいますが、江戸幕府を開き、更に将軍の座を徳川秀忠に譲った後は隠居の場として拠点を再び駿府城に。「大御所」政治の舞台となりました。その折に駿府城は大改修、その工事の作事奉行をつとめたのが小堀遠州。駿府城改修の功績により、遠江守が与えられ「遠州」と称するきっかけとなりました。当時を代表する大名茶人・小堀遠州にとっても実は重要なお城でもある!(※残念ながらその遺構は残りませんが、きっと当時建築だけでなくお庭も造られたのでしょう…)
徳川将軍家ゆかりの名城・駿府城は、その存在感ゆえに明治維新後は建築はすべて取り壊され、内堀も全て埋め立てられてしまいます(現在見られる内堀は発掘されたもの)。戦後の1949年(昭和24年)に都市公園として整備され開園と、これは各地の城跡公園と比較すると現代に入ってからのこと。今日見られる城郭建築(東御門、巽櫓、二ノ丸坤櫓)もそれぞれ平成時代に復元されたもので、建築はもちろん、意外なことにまだ城跡(史跡)としても文化財指定を受けていなかったりします。
そして城内(二の丸)の北東部分にある『紅葉山庭園』について。こちらも古くからあった庭園というわけではなく、2001年(平成13年)に新たに作庭されたもの。ですが、その様式は江戸時代の大名が全国各地に作り競い合った“大名庭園”的な池泉回遊式庭園であり、また園路が広く回遊しやすい所は現代ならではのポイント!
紅葉山庭園のデザインのモチーフは「駿河国の自然と名勝」、ざっくり分かりやすく言うと「静岡県の風景」。庭園の中心部の池泉は駿河湾を、入口から見て池泉の向こうに見える築山は富士山を、池泉の中央の石組みは伊豆の荒磯を、池泉の中にある玉石の洲浜~松並木は三保の松原を表現。また、池の対岸(東部分)の園路には東海道の道標が置かれる通り、東海道の風景が表されています。「里の庭」「海の庭」「山里の庭」「山の庭」という4つのエリアごとに移り変わる景色が楽しい!
庭園の奥には茶室「雲海」「静月庵」が佇み、雲海・静月庵は貸席での利用になりますが、その入口部にある立礼席では一般の来園者がお抹茶やお煎茶とお菓子を楽しむことができます。こちらのお茶室を手がけたのは京都の一流。京都の茶室の大家・中村昌生が率いた京都伝統建築技術協会、施工は京都を代表する宮大工・安井杢工務店。その立礼席や「雲海」の外観は、伝統の様式の中にもモダンな雰囲気が漂い、中村昌生さんが手がけた他の茶室『泗翠庵』(三重県四日市市)や『出羽遊心館』(山形県酒田市)を思い起こす。先の庭園の「山の庭」の流れ蹲~その先に見える腰掛待合の姿も非常に良い…。
そう、徳川家康ゆかりの城郭…というだけではなく、大名茶人・小堀遠州が作事を手がけた城郭に、現代の茶室の大家が手がけた茶室と茶庭…という点で、江戸時代と現代が繋がったような気分になるのが『紅葉山庭園』。JR静岡駅からは徒歩20分、繁華街からは徒歩10分弱。静岡に訪れた際はぜひ立ち寄ってみて!
(2014年5月、2016年11年、2026年7月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
投稿者プロフィール

- Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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