双柿舎(坪内逍遙旧居)庭園

Soshisha (Former Tsubouchi Shoyo House) Garden, Atami, Shizuoka

日本のシェイクスピア作品の第一人者で早稲田大学文学部を創設した近代の文学者・坪内逍遥。氏が自ら設計した近代建築/自邸と庭園。

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早稲田大学 双柿舎(坪内逍遙旧居)庭園について

【土・日と2月28日のみ公開】
「双柿舎」(そうししゃ)は日本のシェイクスピア劇の第一人者で早稲田大学文学部を創設した文学者・坪内逍遥が晩年を過ごした旧居。大正時代〜昭和時代初期に完成した近代建築/庭園ともに坪内逍遥自身が設計を手がけています。

近代〜昭和に多くの著名人が居をかまえた別荘地・熱海。その代表格『起雲閣』には何度も訪れていたけど、他にもあるはずだよなと思い…その中で(別荘をルーツとする宿泊施設ではなく)一般公開されている施設の一つが来宮駅の程近くに残る「双柿舎」。2022年秋に初めて訪れました。

早稲田大学の初期の花形講師として『早稲田大学演劇博物館』(早稲田大学坪内博士記念演劇博物館)にその名を残し、シェイクスピア作品を全て翻訳した「シェークスピヤ全集」四十巻を残すなど近代を代表する文学者・坪内逍遥。

この双柿舎は氏の晩年、1920年(大正9年)から1935年(昭和10年)に亡くなるまでを過ごした邸宅で、現在残る本館(母屋)/東館(離れ)/和洋折衷の近代建築『逍遥書屋』/そして庭園は坪内逍遥自身が設計。和風の家屋と庭園だけかと思ってたので逍遥書屋の姿にちょっと驚き…!

順路に沿って。まずは入場口となる“中門”。現在の姿でも“粋”な雰囲気があるけど、元は茅葺の門だったとか。「雙柿舎」と書かれた扁額は坪内逍遥の門下生だった会津八一の筆によるもの。ちなみに双柿舎の名前はかつてこの家にあった樹齢300余年の2つの柿の古木が由来。(当時の柿の木は枯れてしまい、現在邸宅内にある柿の木は逍遥の地元・岐阜県美濃加茂市より移植されたもの)
門の脇に赤い屋根の和風建築がありますが、これは後年の増築とのこと。

まず本館(母屋)。中に上がることはできないけれど、玄関・客間・書斎の様子を外から見ることができます。ところどころに数寄屋風の意匠や客間の床の間には“遊び”のデザインが見られる素敵な近代和風建築!なお古写真で見ると以前は茅葺屋根でした。

母屋に上がることはできませんが、縁側に腰掛けて庭園を眺めることができます。植栽や庭石の配置まで逍遥がこだわったという庭園で、サツキ・ツツジ等の刈り込みを中心に、温暖な地域らしいソテツやヤシの木?の植栽が植わった池泉回遊式庭園(現在は枯池)。
なんと言っても最も素晴らしい点は高台からの相模湾の風景…!(曇りじゃなく晴れならもっと良い風景だったんだろうな…)

その庭園のアイキャッチの一つになっているのが1928年(昭和3年)竣工の和洋折衷の近代建築『逍遥書屋』。寺院の仏塔みたいなデザイン性もあるけど、屋根〜頂点に掲げられているカワセミの風見はシェークスピアの句から取り入れられたものなのだとか。唯一中に上がれる建物で、室内では逍遥が暮らした頃の双柿舎の古写真や逍遥の功績をまとめたパネル展示などを見ることができます。

もう一つの主要な建物が逍遥書屋を目の前にのぞむ「東館」(離れ)。逍遥の夫人の隠居所として1934年(昭和9年)に竣工した2階建の和風建築。中の様子は伺えないけれど、特筆したいところは「擬木」の沓脱石。当時は新しい“資材”だった擬木。大きな沓脱石として使っている例はあまり見たことないな…。『逍遥書屋』とともに逍遥の“独自のデザイン性”が垣間見えるところ!

その他にも楽焼窯風の焼却炉や、中門と同じ會津八一の筆による「筆塚」なども。
ちなみに起雲閣のように熱海市の所有かと思っていたら違って、氏が教鞭を取った早稲田大学の所有(死後に大学に寄贈)。週末に施設の案内をしてくださる方は地元の有志の方が中心だそうですが、ときおり先生や学生さんも訪れるとか。…それでも観光施設としての知名度は高くない。気になった方はぜひ訪れてみて!

(2022年10月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR東海道新幹線 熱海駅より徒歩20分強
JR伊東線 来宮駅より徒歩6分
JR熱海駅より路線バス「福道町」バス停下車 徒歩5分

〒413-0016 静岡県熱海市水口町11-17 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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