現代美術家・maisによる“アサギマダラ”がモチーフの『祈りの天井画』が人気。客殿から眺める枯山水庭園。隣接する令和の枯山水庭園“摩利の庭”も。
尊陽院庭園/本法寺“摩利の庭”について
「尊陽院」(そんよういん)は国指定文化財庭園のある日蓮宗の本山『本法寺』の塔頭寺院。現代美術家「mais(マイス)」により制作された『いのりの天井画』(2022)が人気・話題。書院に面する枯山水庭園と、本山・本法寺境内に作庭された現代的な枯山水庭園『摩利の庭』が眺められます。
(※『摩利の庭』は「尊陽院の庭園」ではありませんが、受付前から眺められるよう繋がっているので併せて紹介。)
豊臣秀吉の都市計画により寺院が集められた上京区の“寺之内”エリア。この尊陽院も1575年(天正3年)に別の場所に日恵上人により創建された後に本山・本法寺とともに現在地に移転。
現在残る伽藍のうち、本堂・書院(客殿)は江戸時代中期の天明の大火の後に再建された江戸時代後期の建築。本堂内陣の天井画の雲龍図は再建当初から残るものだそうで、つい近年まではあまり知られていなかったものの、今年(2024年)作者が判明し『京都御所』に出入りした御用絵師・鶴澤探泉(狩野派の流れを汲む“鶴澤派”の画家)による作と報じられました。
そんな歴史ある寺院も、現代(平成年代)には長いあいだ無住の空き寺に。そこへ現在のご住職、伊丹ご夫妻が2007年に入寺。
そこからお寺が再生される中で、本堂の令和の大改修を実施する際に、お寺の新たなスタートを切るべくディレクションを依頼されたのが、滋賀県のアーティスト・maisさん。秋に日本でも見られる人気の渡り蝶「アサギマダラ」をモチーフとした『祈りの天井画』がコロナ禍制作され、2022年に落慶法要が営まれました。なお天井画だけでなく、カラフルな行燈や弧を描く戸など斬新なデザインは他にも。
そんな天井画の奥、書院に面した庭園があります。2007年に入寺された後に新しくされたという枯山水庭園。白砂の中に苔による二つの中島、そして奥に枯滝石組が配され、訪れた夏にもサルスベリのピンク色の花で彩られた優しい枯山水。
なお、苔むした前庭には京都の歴史的エリアのお寺には珍しい?柔らかいカーブを描くコンクリート(と版築?)の仕切りがあり、伝統的な空間と現代てな空間が同居する面白さが。
■摩利の庭
そんな尊陽院さんの受付からも眺められる枯山水庭園が「摩利の庭」。こちらは正確に言うと尊陽院さんの境内ではなく、本山・本法寺の境内の『大摩利支尊天堂』に面した庭園。なので作者も管理者も異なりますが、併せて紹介。
こちらも令和の時代に作庭された現代の枯山水庭園。本法寺や近隣の『妙顕寺』、『妙蓮寺』と共に毎年春・秋に行われている「まるごと美術館」の新たな庭園作庭プロジェクトの一環として、京都の若手庭師「植司」皆川拓哉さんにより作庭されました。
中央のさざれ石と周りの七石(京都の銘石「加茂の七石」)はイノシシに乗る摩利支尊天とそれに仕えるイノシシ7匹に見立てたもの。その周囲に抽象的に立てられた六方石は摩利支尊天の発する生命力を感じる光を表現したもの。奥の築山には桜が植わっているので春にまた見に訪れたい庭園!
(2024年8月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)