金沢城公園/近江町市場の程近く。金沢観光穴場の近代和風建築には表千家家元・千惺斉宗左プロデュースの茶室/露地庭園も。金沢市指定文化財。
旧園邸 茶室“松向庵”について
「旧園邸・松向庵」(きゅうそのてい・しょこうあん)は国指定史跡『金沢城』(金沢城公園)の程近くにある大正時代の近代和風建築。その数寄屋風建築と露地庭園は表千家十二代目・千惺斉宗左(敬翁宗左)監修によるもの。金沢市指定文化財。現在は市営の貸室/貸茶室として活用されています。
金沢市民の台所『近江町市場』や金沢城公園の北西の入り口、黒門や甚右衛門坂のすぐ近く。道路に面した木塀が歴史的な雰囲気を醸すこの邸宅、門の前に目立つ見学案内はありませんが、貸室がない日は見学することができます。コロナ禍は見学することがなかなか叶わなかったのですが2023年4月に初めて訪れたので紹介。
その歴史について。北陸名物の羽二重で商売を営んでいた商家・本郷長次郎の邸宅として1918年(大正7年)〜1921年(大正10年)造営。その後、戦後には園酉四郎氏が取得し夫妻の自宅として用いられていましたが、当人・そして夫人が亡くなられた後にその遺志によって平成年代序盤に金沢市に寄贈されました。
商売を営んでいた方の邸宅ながら『金沢市老舗記念館』とはまた全然構造が異なる、プライベートスペースとしての性質が強い金沢の町家建築。
当初の施主・本郷長次郎が茶人だったことで、冒頭にも名前を挙げた表千家家元・千惺斎宗匠の指導によって各部屋が茶事に使えるように作られている数寄屋建築であるのがその特徴。
そして前庭/中庭(坪庭)/四畳半の茶室“松向庵”の露地庭園/主座敷前の庭園…と大小4つのお庭があり、室内からはどこかしらのお庭が目に入るように配置されているのもこの旧園邸の素敵なところ。
特に中庭はとてもシンプルながら左右に配された自然石とつくばいの構成が非常にスタイリッシュ。しかも蹲踞に書かれた文字が、室内からは目に入らないように向けられているのは施主や庭師の意図が感じられて面白い。
そして主庭から見る建物はお隣・野々市市の国重要文化財の町家『喜多家記念館』を連想する佇まい。この『旧園邸』を気に入った方はぜひ野々市の『喜多家記念館』もチェックしてみて。
(2023年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR北陸新幹線 金沢駅より20分弱(駅周辺にシェアサイクルあり)
金沢駅より路線バス「武蔵ヶ辻・近江町市場」バス停下車 徒歩4分
〒920-0913 石川県金沢市西町17-7 MAP