長町研修塾 茶室“匠心亭”

Nagamachi Kenshujuku Garden, Kanazawa, Ishikawa

伝統技術の後継者/職人不足が課題の時代に、金沢市が25年前から取り組む“金沢職人大学校”。その研修生による茶室“匠心庵”と露地庭園“山景園”。

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長町研修塾 茶室“匠心亭”について

「金沢職人大学校 長町研修塾」(かなざわしょくにんだいがっこう ながまちけんしゅうじゅく)は金沢市内の主要観光地の一つ・長町武家屋敷跡の町並みにある和風建築/庭園。

2023年4月に初めて訪れました。実はずっと来たかったんだけど、コロナ禍の間は非公開。現在は武家屋敷をルーツとする和風建築の外観と庭園・茶室が観光客にも広く一般公開されています。

まずは金沢職人大学校について。さかのぼること1996年(平成8年)、金沢市内にも数多く残る歴史的建造物や景観に関わる伝統技術の保全・継承と職人の育成を目的に設立された教育機関。“大学校”の名前だけど若年層のための大学/専門学校ではなく、受講の対象はすでに一定のキャリアを積んだ現役の職人。

コースは造園/石工/左官/瓦/大工/畳/建具/板金/表具の9つ+文化財クラスの歴史的建造物の修復専攻科とあり、条件を満たす職人の受講はすべて無償(金沢市+これらの組合から出資された公益財団法人負担)。市をあげて体系的に伝統技術のエキスパートを育て次世代に継承する、そのための施設。(現代も職人の後継不足が課題視されているけれど、金沢市内では平成年代の初頭からその課題に取り組んだ結果生まれた機関でもある)

大学校の本体はJR北陸本線の高架に面した『金沢市民芸術村』内にありますが、この「長町研修塾」は長町武家屋敷跡に残る武家屋敷を活用したサテライト施設。主屋は江戸時代末期から明治時代初期の建築と推定されていて、この建築を実際の教材として1998〜1999年に金沢職人大学校の1期生により修復/改修されました。

あわせて整備されたのが主屋の奥にある茶室“匠心庵”とその露地庭園。一見歴史的に見える茶室もこの大学校の研修生によって新たに建築されたもの!

“山景園”と名付けられた庭園は、金沢市内から眺められる山々(医王山・戸室山・卯辰山・野田山・高尾山・キゴ山・庄司峰・国見山)の姿を自然石で表現した枯山水を中心として、野点もできる茶庭として作庭。こちらも研修生の方々が自ら設計から施工まで手がけているもの。こちらもまるで歴史的な庭園のような風格。

金沢市内、ひいては石川県内に歴史的な庭園に良好な状態で残されていることの背景もここで感じることができます。いつか大学校の講師の方の体系的なお話も聞いてみたい。旅行の方もぜひ立ち寄ってみて。

(2023年7月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR北陸新幹線 金沢駅より2km弱(徒歩25分弱。市内各地にレンタサイクルあり)
金沢駅より路線バス「香林坊」バス停下車徒歩3分

〒920-0865 石川県金沢市長町1丁目3-7 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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