庭師・城川久治が“近江八景”を表現し作庭した近代庭園と楼閣をのぞむ“北陸の銀閣寺”。黒部市指定名勝。
松桜閣(天真寺)庭園について
【冬季は休園】
「松桜閣」(しょうおうかく)は初代富山県知事・国重正文の邸宅として1883年(明治16年)に建築された近代和風住宅。その後、明治24年に黒部の豪農&衆議院議員・西田収三が購入し現・富山市から現在地に移築、明治31年に作庭がはじまった池泉回遊式庭園が「松桜閣庭園」として黒部市指定名勝となっています。
2020年9月、約3年ぶりに富山県を訪れました。3年前に訪れた氷見の富山県指定名勝『光久寺の茶庭』の紹介でも少し書いてるのですが…富山県って日本庭園が少ない。なので紹介している庭園も少ないんですが…市指定名勝や「●●庭園」と名のつかないものまで掘り下げるともう少しあるなってな感じで、その中の代表格がこの松桜閣。今回の北陸旅の目的地の一つでした。北陸新幹線の黒部宇奈月温泉駅からすぐ!
大正時代末期に西田収三から現在所有する曹洞宗の寺院・天真寺(当時は大休庵)に寄贈…という説明と1931年(昭和6年)に天真寺が西田家から購入したという説とある。その翌年(1932年)に当地の庭師・城川久治が“近江八景”を表現する形で改修。池泉回遊式庭園越しに楼閣風の松桜閣を眺められるその姿は“北陸の銀閣寺”なんてキャッチコピーも。
農業用水?から取り入れた水の流れが、琵琶湖を表した大きな池泉へと辿り着き、その池の中央には“堅田の落雁”『浮御堂』を表す茶室“枕流亭”が浮かびます。それ以外にも唐崎の松や瀬田の唐橋を表す松や石橋、そして園内には様々なタイプの石灯籠や庭石が点在。
“枕流亭”だけでなく松桜閣自体も数寄屋風建築であり、そこから渡り廊下を通じて茶室棟が連なるという、かつては頻繁に茶会が催されていたのかもなあ、と思わせる感じ。(ちなみに予約をすればお茶もいただけるそうです)
実は昭和年代には他にも建物が増築されていたそうですが、北陸新幹線の開通にあたって、駅の近隣にあったこの庭園と邸宅を駅周辺の観光スポットとして近代に近い姿に整備。老朽化が進んでいた松桜閣も一度解体を経て復元されたものです。
それを主導したのが地域のNPO。お寺の庭園でありながら管理・運営はNPO法人「松桜閣保勝会」がされているのは珍しい例だし興味深い。その名の通り春には桜が咲き誇るようなので、いつかその風景も見てみたい。
(2020年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)