正伝寺庭園

Shodenji Temple Garden, Kyoto

デヴィッド・ボウイが愛した枯山水庭園――比叡山の借景も美しい、大名茶人・小堀遠州作庭と伝わる“獅子の児渡し庭園”。京都市指定名勝。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

正伝寺庭園“獅子の児渡し庭園”について

「正伝寺」(しょうでんじ)こと吉祥山 正伝護国禅寺は京都市の北部にある臨済宗南禅寺派の寺院。比叡山を借景とする枯山水庭園(京都市指定文化財)の作庭は小堀遠州と伝わり、世界的なロック・ミュージシャン:デヴィッド・ボウイ谷村新司さんが愛した庭としても知られます。京都を代表する借景庭園の一つ。
何度も訪れているので、ここでは桜/初夏/秋/冬(雪の日)と季節ごとの写真を紹介。

その歴史について。創建は鎌倉時代の1273年(文永10年)。当初は京都市の中心部、烏丸今出川(現在の同志社大学のあたり)に建立されたそうですが、約10年後の1282年(弘安5年)に現在の地・洛北の西賀茂に移転/再建されました。室町時代には後醍醐天皇の勅願寺となり興隆――するも応仁の乱により荒廃。

その後、江戸時代初期に徳川家康の庇護を受け再興。国指定重要文化財となっている本堂(方丈)は『南禅寺 金地院』から移築されたもので、それ以前は伏見桃山城の本丸御殿の一部だった建物とされます。その当時に狩野山楽一派により描かれたと推定されている淡彩山水図の障壁画も国重文。
また廊下の天井は“血天井”と言われ、徳川家康の家臣の中でも有名な鳥居元忠が関ヶ原の戦いを前に伏見城で石田三成軍に敗れ自刃した痕跡が残るそう。ちなみに近隣の『源光庵』にも血天井があります。

その方丈の前に広がる、白砂とサツキの刈込のシンプルな枯山水庭園の作庭はその時代の代表的作庭家で大名茶人・小堀遠州の作庭と伝わります。同じく小堀遠州作庭と伝わる『南禅寺方丈庭園』の“虎の子渡しの庭”に対して、こちらは“獅子の子渡しの庭”。サツキ等の刈込により表現されている七・五・三と、借景の比叡山が素晴らしい!その枯山水を、春には枝垂れ桜が、秋には勅使門近くの紅葉が彩りより美しい姿を見せてくれます。初夏にはサツキの刈込のピンクの花も。

ちなみに…方丈が移築された年代が、正伝寺の公式だと承応2年(1653年)、お寺の前に建つ看板では寛永年間(1624〜1644年)。この庭園は方丈の移築に伴って作庭されたと考えると…1653年だと小堀遠州は既に亡くなっている。
移築元の金地院には小堀遠州の作という記録がちゃんと残る枯山水庭園がある――元々は金地院の中に作庭したものをこの地に写した――みたいなこともあるのかな。だとすると“虎の子渡しの庭”と“獅子の子渡しの庭”が「位置的に離れてたわけではない」とも思えるし。

そしてこの借景の取り入れ方が別に遠州によるものじゃないにしても、その時作庭に携わった方のセンスの素晴らしさは疑いようがないもので。なお現在の姿は昭和年代によって重森三玲によって修復を後の姿になります。

人で賑わう『金閣寺』や『大徳寺』からは自転車で10分ちょっと。京都の市街地から距離がある分、一気に観光者の姿も無くなり――風や鳥や山の音を聴きながら静かにお庭を眺めることができます。
ロック・スターとして様々なものを背負い・追われていたボウイも、少しでも逃れたい何かがあって、洛北のこの地を訪れていたのかな――。ロック好きな知り合いには、京都のオススメの庭園を聞かれたら大体ここを答えます。喧騒の京都から逃れたくなったらここへ。

(2016年2月、2019年12月、2020年5月・6月・12月、2022年6月、2024年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

北大路駅・出町柳駅より路線バス「西賀茂車庫」「神光院前」バス停下車 徒歩10分
京都市営地下鉄烏丸線 北大路駅より約3km

〒603-8847 京都府京都市北区西賀茂北鎮守菴町72 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
PICK UP / COLUMN
最新の庭園情報は約10万人がフォローする
【おにわさん】のSNSから。