尾張徳川家初代・徳川義直の母・お亀の方ゆかりの寺院は建築が国重要文化財…重森三玲の弟子による桜の美しい枯山水と京都府指定名勝の隠れた紅葉名所庭園も。
正法寺庭園について
【通常非公開/特別公開日あり】
「徳迎山 正法寺」(しょうぼうじ)は国宝『石清水八幡宮』と国指定名勝の庭園『松花堂庭園・美術館』の中間、東高野街道沿いにある浄土宗の寺院。徳川御三家の筆頭・尾張徳川家ゆかりの寺院で、本堂・大方丈・唐門が国指定重要文化財、また庭園が京都府指定名勝です。
京都市にも洛西に『正法寺庭園』がありますが、文化財に指定されている『正法寺庭園』は八幡市のこちら。通常非公開ですが、春と秋の週末に年間数日のみ特別公開があります(公開日は公式サイトよりご確認ください)。2018年の桜の季節に初めて拝観、その後2022年、2024年に拝観した際の写真を紹介。
その歴史は鎌倉時代のはじめに遡り、1191年(建久2年)に鎌倉幕府の御家人・高田蔵人忠国により天台宗の寺院として創建。高田忠国は石清水八幡宮の社家「志水氏」の祖でもあり、正法寺は高田氏改め志水氏の菩提寺に。
室町時代に浄土宗に改宗するとやがて後奈良天皇の勅願寺となり、後奈良天皇より賜った山号“徳迎山”寺号“正法寺”の額字は京都府指定文化財。
桃山時代〜江戸時代にはこの正法寺・志水家に生まれた“お亀の方”が徳川家康の後妻となり、後の尾張徳川家初代・徳川義直を出産。
家康の没後は家直とともに『名古屋城』に移り“相応院”を名乗ったお亀の方。1626年〜1630年頃に正法寺に現在は国重要文化財の本堂・唐門・大方丈を寄進され、以後江戸時代を通じて尾張徳川家ゆかりの寺院(菩提寺)となりました。本堂には珍しい金箔の“逆輪”(さかわ)による装飾も。
主となる庭園は2つあります。まずは本堂・大方丈の前に広がる枯山水庭園“本堂庭園”。いわゆる“御成門”にあたる唐門を中心の景観の一つとして、白砂の中にサツキやヒバ類の刈込と石組を配した“雲海”を表現したかのような庭園。ご本尊の阿弥陀様にちなんだ「阿弥陀二十五菩薩来迎」が主題の庭園で、かつて昭和を代表する作庭家・重森三玲の下で作庭に携わった寝屋川市の庭師・吉田清史さんにより2000年代前半に作庭されました。
初めて拝観した時(3月末)は庭園正面の満開の桜がとても美しくて…!この枯山水はぜひ桜のシーズンに見て欲しい…。
そして大方丈裏、京都府指定文化財の書院・小方丈・住職居間の三方から眺める池泉鑑賞式庭園が京都府指定名勝の庭園(表の庭園は文化財じゃないんですよね。意外と新しいのかな)。書院が建立された江戸時代中期(1707年)頃に作庭されたと推測される庭園で、山裾を利用した滝石組から心字池を手前へと水が流れ落ちる姿が見られます。
で、この庭園の見頃は桜の時期ではなく新緑や紅葉の季節!庭園を覆うように山裾に植わったモミジ/カエデ類が、桜の季節は新緑にはまだ早いけど5月には青々とした姿で降り掛かり、秋には深紅の世界に!…2回とも春に訪れてるので秋にも見に訪れたいなあ…。書院は数寄屋風の意匠も見所!
その他にも鎌倉時代の阿弥陀如来像が国の重要文化財、徳川義直直筆による「徳川家康像」、狩野探幽関連の画家の作と推測されている大方丈の襖絵なども見所。
あと徒歩10分ほどの場所にある国指定史跡“八角堂”もいちおう正法寺の境内地で、石清水八幡宮や先に紹介した『善法律寺』の善法寺家、そして豊臣秀頼ゆかりのお堂。京都市内の歴史的寺院に負けない格式をほこる名刹です。
またお亀の方ゆかりの寺院といえば『妙心寺 大雄院』も。あわせてチェック!
(2018年3月、2022年5月、2024年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
京阪本線 石清水八幡宮駅より徒歩25分
石清水八幡宮駅・樟葉駅より路線バス「おさ田」バス停下車 徒歩10分
*石清水八幡宮駅前にレンタサイクルあり
〒614-8062 京都府八幡市八幡清水井73 MAP