神仙郷(箱根美術館)庭園Shinsenkyo (Hakone Art Museum) Garden, Hakone, Kanagawa

2021年、新たな国指定名勝に。紅葉の名所として人気の東京圏随一の美しい苔庭と、箱根の山々から相模湾まで見渡す庭園。

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神仙郷庭園(箱根美術館庭園)について

「神仙郷」(しんせんきょう)は箱根登山鉄道・強羅駅の周辺“強羅エリア”にある『箱根美術館』内の庭園。宗教家・岡田茂吉が理想郷として作庭した回遊式庭園で、2021年に新たに国指定名勝となりました。園内にある「箱根美術館本館・別館」「観山亭」「山月庵」も国登録有形文化財。

2020年秋に国指定名勝に答申されたのが、京都の『仁和寺御所庭園』七代目小川治兵衛作庭)、『知恩院方丈庭園』玉淵坊作庭)、そしてこの神仙郷。先の2箇所は有名だし行ったこともあったけど、ここは全くノーマークでした…。戦後に完成した庭園として国指定名勝となるのは重森三玲『岸和田城庭園“八陣の庭”』に次いで2例目。

でも元々お隣の『強羅公園』とともに国の登録記念物(名勝地)ではあったんですよね…。東京に居た頃から記し始めた行きたい候補の中には『箱根美術館』があった。でも数年前に『箱根彫刻の森美術館』に行って以来なかなか強羅まで足を運ぶ機会がなかった。

温泉地として言わずもがなの存在である分、宿の相場が比較的高めで、東京に居る頃は“近くて遠い”存在だった箱根。2021年、次回関東へ行く時には行こう!と決めて(夏に『江之浦測候所』に来た時も寄りたいと思ってたんだけど、豪雨で断念)、10月の関東アウェーの際に初めて訪れました。

熱海の『MOA美術館』でも有名な新宗教団体・世界救世教。その創始者・岡田茂吉が戦後の1952年(昭和27年)に創設したのが箱根美術館。
“箱根で最古の美術館”と言われ、氏が蒐集した美術品のうち、古代(縄文時代・弥生時代)の土器から中世(~鎌倉・室町・桃山・江戸時代)までのやきもの・陶磁器を中心とした展示をされています。先述の『MOA美術館』の姉妹館。

その美術館に先駆けて、太平洋戦争中の1944年(昭和19年)から岡田茂吉が構想し造営が始まったのが神仙郷。なので…神仙郷は観光目線で言うと“箱根美術館の庭園”と伝えるのがわかりやすいのだけど、正確には“聖地・神仙郷の中に箱根美術館がある”という考え方で…神仙郷=庭園の名前、というよりは境内・神域に近い意味合いかなとも思う。

受付を済ませて美術館本館へと向かう園路も、9月に花を咲かせる萩と野面積みの岩が配された“萩の道”と孟宗竹が配された“竹の庭”が。近代建築風の美術館本館も岡田茂吉自身による設計で、上層階からは神仙郷を見下ろせるだけでなく、遠く相模湾までの眺望を味わうことができます。

■石楽園
本館から少し下った所にあるのが、巨石が配された庭園“石楽園”と“観月亭”、茶室“山月庵”。後述の“苔庭”も美しいのだけど、より造形性が現れているこの庭園のハイライトはここ。

その巨石も一部は現地の岩石を活かしつつ、その斜面には渓流“流れ”や芝生が張られた“近代日本庭園”のエッセンスを持たせつつ、斜面の下部からは早雲山・箱根山を借景に、高台からは明星ヶ岳の眺望がど真ん中の豪快かつスケールの大きな庭園。

茶の湯にも造詣が深かった岡田茂吉――この庭園の一角に別世界の“露地”をもうけているのではなく、開放的な庭園のど真ん中に茶室を配しているのもまた興味深い。大名庭園っぽいというか。
しかも“観山亭”(および現在修復中で外観も見られなかった『日光殿』)、公式には書かれてないけどWikipediaには近代数寄屋建築の巨匠・吉田五十八も関わったとある……マジかよお……いつか中も見たいなあ……!伝統を踏まえながら独特の世界観を表した、まさにワンダーランド。

苔庭~茶室“真和亭”、“富士見亭”
園内の最下部に広がるのが、約130種類の苔による“苔庭”。首都圏にもこんな美しい苔庭があったのか…!
苔庭には約200本のモミジが植わっており、訪れた時期には苔の緑をより増幅させていただし、これは紅葉の時期にはまた格別なんだろうなあ…と想像させられた。また“石楽園”から続く、地形を活かした流れはここで素敵な滝の姿を見せる。

苔庭の一角にあるのが茶室“真和亭”と“富士見亭”。1990年(平成2年)に完成した真和亭では季節のお菓子と自然農法で生産されたお抹茶をいただくことができます。並び建つ“富士見亭”は岡田茂吉が東京・世田谷に“玉川郷”を開いた際に建築した旧邸宅で、1974年(昭和49年)にこの場所に移築されました。(建物内部は撮影禁止)

以上、長くなったけど…でも実は総面積3万坪のうち公開されているのは一部で、石楽園~苔庭の南部にまだ広大な庭園が広がる。
その中には実業家・藤山雷太の別荘“神山荘”(これも国登録有形文化財)があって――実は訪れた日に『湘南邸園文化祭』のイベントの一環で申込制の特別公開があったんですよ!!!知らなかった!!!知ってたら申し込んでいたのに……一度じゃなくまた季節を変えて訪れたいと思う場所なので、またの機会に。

(2021年10月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

箱根登山ケーブルカー 公園上駅より徒歩1分
箱根登山鉄道 強羅駅より徒歩10分強
最寄りバス停は「箱根美術館・強羅公園」バス停 徒歩2分

〒250-0408 神奈川県足柄下郡箱根町強羅1300 MAP

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