箱根小涌園の2013年開館の新美術館では、近代和風建築をリノベしたカフェや岩城亘太郎から引継がれる自然主義庭園も。
岡田美術館庭園について
「岡田美術館」(おかだびじゅつかん)は箱根登山鉄道・小涌谷駅の周辺“箱根小涌園”の一帯にある私立美術館。国指定重要文化財・重要美術品を含む、日本美術/東洋美術をコレクション・展示するほか、近代の古民家を活かしたお食事処/カフェ『開化亭』とその庭園があります。
2021年秋、『箱根神仙郷』と『強羅公園』という2つの文化財庭園を目的に久々に訪れた箱根。それらに加えて気になっていた庭園/美術館も回ったので紹介していきます。
東証JASDAQにも上場するパチンコ、パチスロ機の大手メーカー“ユニバーサルエンターテインメント”の創業者・岡田和生さんがコレクションした日本~東アジアの古美術(絵画や陶磁器)を展示/所蔵する美術館として2013年10月に開館した、歴史的には新しい美術館。
そのコレクションの中には野々村仁清の香炉、尾形乾山、渡辺崋山、伊藤若冲『孔雀鳳凰図』など国指定重要文化財や重要美術品も含まれます。
箱根の山の斜面の中腹に建つこの美術館、上層階から繋がる形でカフェ・レストラン『開化亭』や、総面積約15,000平方メートルという箱根の自然を活かした回遊式の日本庭園があります(※2021年時点ではその約半分を占める“渓流散策コース”は閉鎖中でした)。
まず、元々この場所にはかつて明治時代に創業した欧米人向けのホテル『開化亭』が存在しました。
現在開かれているミュージアムカフェ/レストランの開化亭はその名前を引継いだもので、昭和初期の日本家屋を三浦慎建築設計室の設計、地元・箱根の小川工務店の施工でリノベーションして現在の姿に。神奈川の海・山の幸によるうどんが◎。
この建物は(古い航空写真等を見ている限り)美術館のオープン前からこの地にあるもので、建物と調和した庭園も昭和初期からあったものかと思いきや、三浦慎建築設計室のウェブサイトの本文や写真によると2013年に新たに整備されたもの(一部は元々あったものを活かしているのかもしれない)。
造園側の施工は誰だ…?と思って調べたところ、昭和の東京を代表する作庭家・岩城亘太郎の興した岩城造園(現・岩城)によるものだそう。
コンセプトは『~湧水・樹木の生命力~自然の恵みを感じる庭園空間』。山の斜面・地形と自然の植栽、そして雪解け水を活かした3つの滝からトクトクと清流が流れ込む池泉回遊式庭園と主体として、庭園上段部には現地の自然石が無造作に配された石庭空間と、今回は閉鎖されていた“渓流散策コース”へと続いていきます。
それにしても8年間でこんなに苔むすんだなあ――岩城亘太郎が七代目小川治兵衛から引継いだ?“自然主義”を更に山の中に落とし込んだ、美しい風景。訪れた時はまだ青々しい景色だったけど、きっと11月には紅葉でカラフルな風景が楽しめたんだろう…!(自然度合いが強いので、夏の散策はあまりオススメできないかも?)
数々の美術品とカフェに庭園、更には俵屋宗達の国宝『風神雷神図屏風』を日本画家・福井江太郎が再構築した巨大壁画『風・刻』を眺めながら浸かれる源泉かけ流しの足湯カフェも。古美術はあまりピンと来ない…という人もどうぞ。
(2021年10月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
箱根登山鉄道 小涌谷駅より徒歩20分弱
小田原駅・小涌谷駅より路線バス「小涌園」バス停下車 徒歩1分
〒250-0406 神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷493-1 MAP