柴田氏庭園“甘棠園”

Shibata-shi Garden "Kantonen", Tsuruga, Fukui

狩野探幽や小堀遠州が設計/作庭に携わったと伝わる、“敦賀富士”野坂山の借景が美しい庭園。国指定名勝。(現在は改修工事中)

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柴田氏庭園“甘棠園”について

「柴田氏庭園」(しばたしていえん)は小浜藩の豪農だった柴田氏の屋敷に江戸時代前期に作庭された回遊式の築山林泉式庭園。その設計には狩野探幽小堀遠州が関わったとも言われます。国指定名勝で別名は「甘棠園」(かんとうえん)。

敦賀は地方としては比較的狭い範囲に2つの国指定名勝庭園があるので(もう一つは『西福寺書院庭園』)、庭園巡り旅にとってはありがたい…てことで2019年3月に約5年ぶりに訪れました。
…が、ちょうど大規模な改修工事中で、池の水は抜かれ、書院の建物もシートで覆われて見ない状態に…。改修工事は北陸新幹線の敦賀延伸を見据え2021年過ぎまで続けられるそう、今後訪れる方はご留意を。写真も初めて訪れた2014年のものを混ぜながら。

この庭園は狩野探幽に地割設計を依頼し、1688年により小堀遠州により築庭されたと伝えられる――と説明板やパンフレットにありますが、小堀遠州はその40年前に亡くなられているので遠州流の別の庭師さんによって手掛けられたのだと考えられます。
初めて訪れた時には外観も観ることができた庄屋屋敷の一部(書院)も「甘棠館」と名付けられた歴史的な建造物で、その建物からお庭を眺めると、借景に“敦賀富士”野坂山を借景に観ることができます。

…前回訪れた時は雨が降ったりやんだりでその借景に気付かなかったなあ。今回ははっきりとその借景を眺められたけど、池の水がないので感動は半分…。
池に水が戻るのはしばらく先かもしれないけど、庭園の築山に植わっている刈込みはきっと晩春に花を咲かせると思うので、その姿はきっときれいなんだろうな。

また、お庭に植わっているヤマモモ・クスノキは敦賀市の天然記念物に指定されています。中でもクスノキの老齢巨木は柴田氏が楠木正成の子孫を名乗ったことにちなむものだそう。

今回は書院「甘棠館」の姿を観ることができず残念でしたが、内部には小浜藩主・酒井家の定紋と輪宝紋がすかされており、参勤交代時の小浜藩主の休憩所にもなっていたと言われます。
初めて訪れた時は何も感じていなかったけれど、今回改めて築山側から池泉庭園を眺めた時に――この建物の姿が見えなかったのは風景として寂しさは感じた…。

庭園を見た後、現場で作業されている方と少しお話しました。

●この修復工事が始まってから実は結構時間は経っていて(確認すると2017年に敦賀市のサイトでしれっと告知されている。観光サイトでは告知無し)、自分が前回訪れた2014年以降~その工事が始まるまでは結構荒れた状態だった
●予算の都合で少しずつ進めていて――2022年――北陸新幹線開業の時期には美しい姿になっているはず

とのことでした。
美しい庭園が維持されるのは当然のことではなくて、

●庭園に投資してくれる人たち(自治体、宗教法人、富豪、庭園好きな個人――色々あると思う)
●庭園を美しくしてくれる人たち(庭師さん、造園・植木業の方々、そして地元の方々)
●そして庭園に訪れる人たち(観光客のみならず、地元の方々)

他にも色々あるとは思うのですが、色んな立場からの支えがないと維持し続けるのは難しい。
3年後、この庭園が美しい姿を取り戻した際には――地元の方々を含め多くの人が見に訪れ、その存在を知ってもらえたら嬉しいな、なんて思う。自分も次回またその頃に!

(2014年8月、2019年3月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR北陸本線 敦賀駅より約4km(敦賀駅にレンタサイクルあり)
JR小浜線 西敦賀駅より約2.5km(徒歩30分)
敦賀駅より路線バス「市野々」前下車徒歩1分(金山線)

〒914-0124 福井県敦賀市市野々町1丁目19-2 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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