日本植物学の父・牧野富太郎が少年時代に訪れていた苔の美しい庭園は、土佐三名園の一つ。高知県指定名勝。
青源寺庭園について
【拝観は要事前電話予約】
「龍淵山 青源寺」(せいげんじ)は土佐藩主・山内家の筆頭家老であり、江戸時代に佐川の城下町を治めた深尾家の菩提寺。臨済宗妙心寺派。江戸時代に作庭された池泉式借景庭園が高知県指定名勝となっています。
京都では世界遺産の庭園を手掛けている禅僧・夢窓疎石の作庭と伝わる、高知市の国指定名勝『竹林寺庭園』。それと並び“土佐三名園”(土佐三大名園)と並び称される庭園が佐川町には二つ残ります。そのうち一つがこの青源寺。
その歴史は江戸時代はじめの1603年(慶長8年)、山内一豊に従って掛川から土佐国に入った武将・深尾重良により創建。江戸時代中期の1728年(享保13年)に大火によって山門を残し伽藍を焼失、現在残る庫裏は1731年に、本堂は1766年(明和3年)の再建。
庭園が作庭されたのは1603年の創建時とも、大火の後の再興の時期(1700年代半ばの宝暦年間)とも言われるそう。また2つある池の片方は昭和初期に新たにもうけられたもの。当初は文部省の指定名勝(=国指定名勝)からのちに高知県の名勝になったのはその辺の変化が理由なんだろうか…。
なんと言っても特筆すべきは苔の美しさ。池の周りも岩盤も苔むしている(あと参道の石塁も苔むしている)。温暖な高知県にこんな苔スポットがあるとは想像もしていなかった!
岩壁がこの庭園の主題とされており、本堂の真裏にもうけられた枯滝石組から池泉へと繋がる姿が表現されています。また2回とも冬に訪れたのでこの写真では伝わらないけど、庭園中央や斜面にはモミジが中心に植わっており、秋には紅葉の名所(そして春にも青もみじの名所)なんだそう。でも禅宗の庭園。落葉した庭園でもその苔庭はわびさびや枯淡が感じられるし、雨の日もいい。
ちなみに佐川町出身の“日本の植物学の父”牧野富太郎博士はよくこのお寺に出入りしていたと、東京・練馬の博士の自邸に開かれた『牧野記念庭園』の展示パネルに記載されていました。こんな名園を見ながら育ったんだなあ…!
隣接する公園はそんな牧野博士の礎を築いた場所で、“牧野公園”と名付けられています。また土佐三名園のもう一つ『乗台寺庭園』はここから徒歩10分程の場所。この隠れた名園を中心としたマイクロ・ツーリズムとかいいと思うんだよなあ。
(2017年1月、2021年1月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)