隆泉苑(佐野美術館)庭園

Ryusenen Garden (Sano Museum's Garden), Mishima, Shizuoka

国宝/重要文化財の刀剣も人気の美術館は、富士山からの湧水の流れ込む美しく澄んだ池泉回遊式の日本庭園も。近代和風建築“隆泉苑”は国登録有形文化財。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

佐野美術館・隆泉苑庭園について

「佐野美術館」(さのびじゅつかん)は静岡県三島市の中心部にある私立美術館。その敷地には国登録有形文化財の和風建築『隆泉苑』(りゅうせんえん)と池泉回遊式の日本庭園が併設されています。(美術館開館時間中は庭園散策可能)
2024年7月に久々に立ち寄ったので、その際の写真を中心に紹介。

駅前に国指定文化財庭園『楽寿園』のあるまち、三島。源頼朝が源氏再興を祈願した『三嶋大社』の門前街として、そして江戸時代には東海道の宿場町として栄えた街は、富士山の地下水が至るところで湧いて流れる水都でもあります。そんな湧水池をそのまま回遊式庭園とした楽寿園に対して、この庭園は湧水池から流れ出た「御殿川」を引き入れた池泉庭園。(両者の距離は徒歩10分ほど)

まず『佐野美術館』について。実業家・佐野隆一のコレクションを広く公開するため1966年(昭和41年)に開館、年間を通じて企画展が開催されている静岡県内の著名な美術館のひとつ。所蔵する国宝『薙刀』徳川将軍家伝来の国指定重要文化財『正宗』をはじめとする刀剣のコレクションが人気ですが、「ねこ」写真で有名な岩合光昭さんの写真展や、日本画、現代の人気作家まで幅広いジャンルの企画展も魅力の一つ!

化学メーカー「東北東ソー化学」の前身「鐵興社」を創業し成功を収めた実業家・佐野隆一。出身地・三島市には私立の佐野美術館を開館したほかにも多額の寄附をおこない、多くの公共施設に「佐野」の名を残します。

三島市名誉市民第一号となった氏が、両親の隠居のための住まいとして昭和時代初期、1935年(昭和10年)に造営したのが和風邸宅『隆泉苑』とその庭園。
家屋の内部はふだんが公開されていませんが(お茶会やブライダル、日本刀の鑑賞会などの貸室、そして地元の小学生が「和」を学ぶ場として活用されています)、数寄屋風の書院と洋風の応接間の同居する和洋折衷な近代和風建築。

約2,000坪の大部分を占めるのが池泉回遊式庭園。家屋の手前にある緩やかな芝生の広場が“近代の日本庭園”らしさをかもしつつ、その先に澄んだ池泉、池の向こうには竹林や多くのモミジなど自然の景へと移ろう。池のほとりでは春には桜〜カキツバタが、そして秋には紅葉と四季折々の姿を楽しむことができます。

庭園の作庭にあたっては、隆一の父・佐野米吉が京都をはじめとする全国から銘木を揃え移植したとか。一方で池の奥には富士山の溶岩石が並んだ園路がある点などは“三島らしさ”を感じます。
また、朝鮮石人像がたくさんあることや立派な「亀趺」など石造物も由緒がありそうなものが沢山…!

ちなみに「隆泉苑」の名は当初からの名ではなく、佐野家の個人邸から美術館の所有へと変わった際に隆一の「隆」と三島に湧く「泉」から名付けられたもの。

この隆泉苑の西側には泉の中で夏に小さな白い花を咲かせる『三島梅花藻の里』や、ホタルの里としても人気の源兵衛川の流れる『水の苑緑地』など、水に関連するいろんなスポットが。じっくりと三島の水景も鑑賞して。

(2017年11月、2024年7月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

伊豆箱根鉄道駿豆線 三島田町駅より徒歩5分
JR東海道新幹線 三島駅南口より徒歩20分(レンタサイクルあり)

〒411-0838 静岡県三島市中田町1-43 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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