現代アートや舞台芸術にも活用されている昭和初期の近代和風建築と、新潟の老舗・長生園による作庭の和風庭園。
旧日本銀行新潟支店長役宅・砂丘館について
「砂丘館」(さきゅうかん)は昭和初期の1933年(昭和8年)に建てられた近代和風建築で、国指定名勝『旧斎藤家別邸庭園』や新潟出身の有名作家・坂口安吾の資料などが展示される『安吾風の館』からすぐ近く。2019年の春に3年半ぶりに訪れました!
別称は旧日本銀行新潟支店長役宅。大正時代に開業した日本銀行新潟支店の支店長(8代目~37代目)の役宅として1999年まで60年以上にわたり用いられました。建物内に新しさを感じる部屋があるのは平成年代まで人が住まわれていたからなのですね。現在は新潟市が所有。
設計は日本銀行の技師・平松浅一、施工は新潟の武田組。戦前の日本銀行の役宅として現存しているのはこの施設と福島市の『御倉邸』(これが現存する最古の役宅)のみ。
そして庭園の作庭は新潟の造園会社『長生園』さん。公式ウェブサイトはないのだけど、このページ(他サイトの求人情報)によると明治28年に創業、120年以上の歴史をほこる老舗。庭園としては主屋から眺められる露地庭風の和風庭園(主庭)のほか、中庭や車寄せの前庭、そして建物の裏にはガーデンパーティーが行われていたという芝生の奥庭も。
初めて訪れた時には新潟市内を舞台に開催されていた現代芸術祭『水と土の芸術祭』の会場として用いられ、そして今回も『風と空と波と光の人形劇場 加藤啓展』が開催されていたのですが、現在館長を務めているのは水と土の芸術祭アドバイザーでもあった大倉宏さん(⇒美術評論家連盟 AICA JAPANでの紹介)。
歴史的日本家屋――でありながらも、イベントスケジュールを見ると伝統文化に関するイベントのみならず、現代アートや舞台芸術、更には洋楽のアンビエント系アーティストのライブ(!)まで開催。攻めてる。そうか、受付の子の服装がおしゃれだったのはだからか~。
※ここで言うオシャレというのは派手なものを指すのではなく、なんというかceroやネバヤンとかを好きそうな感じというか
そしてこの声明も興味深かった。
新潟市財産活用課のミスから生じたBSNニュースの誤報道について(経緯) | 砂丘館
この記事で語られている誤報道については読んでいただき、また財政課や放送局も謝罪をしているのでそこについては特にふれる気はないのですが、《来館者が、のべ1万6000人と過去最高となった》という点。先のような攻めた企画も交えながら文化施設として積極的に活用し、そして『地域の利用者が増えている』という点は素晴らしいことではないでしょうか。基本の入場料は無料という中で、人の体験と記憶によって、歴史的な場を残す。
これは地域の歴史的建造物が今後生き残っていくための一つの道筋だと思う。そのために『間違ったイメージを正すために戦う』姿勢として、上記のような声明ってとてもいい。
現実問題、歴史・社会の教育は受けてきたけれども『地域の文化遺産を大事にし、残していこう』という教育を受けたかどうか、でいうとそれは定かではない(地域によって差があると思う)。
だから、『京都の寺社仏閣は歴史的で素晴らしいが、うちの地域には何もない』そう思っている人が日本の95%ではないか。“映え”でもなんでもいいのだ。気づいてほしい。そのような残したい遺産がおのおのの地域にあって、それはそれこそ『風景の切り取り方』で未来永劫“映える”場所であることを。
(2015年9月、2019年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR上越新幹線 新潟駅より路線バス「西大畑坂上」バス停下車すぐ
新潟駅より約2.8km(徒歩35分) ※新潟市内各所にレンタサイクルあり
〒951-8104 新潟県新潟市中央区西大畑町5218-1 MAP