法明院庭園

Onjoji Homyoin Temple Garden, Otsu, Shiga

日本美術を世界に広めたフェノロサが愛した寺院。琵琶湖を一望する池泉回遊式庭園と茶室前の枯山水庭園(の遺構)。

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法明院庭園について

「法明院」(ほうみょういん)は天台寺門宗の総本山・園城寺(三井寺)の唯一の律院として江戸時代中期に創建された寺院。三井寺の大門(仁王門)からは北へ徒歩15分程離れた、長等山の中腹に位置します。琵琶湖を一望できる境内には明治時代に来日し、世界に日本の美術を紹介した美術史家/アーネスト・フェノロサウィリアム・スタージス・ビゲローの墓所があります。

三井寺の公式ウェブサイトの紹介で知り、初めて拝観。創建は1723年(享保8年)で、書院にはその当時円山応挙池大雅により描かれた障壁画も残るそう(大津市指定文化財)。建物内部は普段は公開していないようですが、大きな唐破風屋根の玄関はその格式の高さを感じる。

そして境内の庭園について。3名以上予約制の『光浄院』や『勧学院』と異なりこちらは自由拝観(志納)。傾斜面に二段のエリアがある庭園で、高台部の書院前には芝生の庭、そして下部には三井寺山内では最大規模の池泉回遊式庭園があります。中島には弁天堂?も。
ここからは琵琶湖や対岸の伊吹山をのぞむ風景が素晴らしく、フェノロサやビゲローはこの景観を気に入って法明院に滞在、仏門にも入り仏教の研究にも没頭したそう。

そして書院から連なった茶室前には茶庭・枯山水庭園――の遺構も。芝庭はとてもきれいなのだけど所々荒廃しているし、樹木の根本や日影になっているところにはイノシシか鹿が掘り起こそうとした穴が沢山ある。
自然と対峙する庭園を残し続けることは簡単ではない、だからこのような庭園に対してネガティブな言葉を用いるよりは過去の元のデザインを想像した方が有益。そしてその中でも、山からの清流が境内に流れ込み続けているのもまた場所の魅力だったんだろうと思う。

フェノロサは国内では岡倉天心とともに東京藝術大学の前身・東京美術学校の設立に尽力し、晩年はアメリカに帰国しボストン美術館の東洋部長として日本の古美術を紹介。ビゲローもまた日本国内で浮世絵を積極的に収集し、歌川国貞・歌川国芳・歌川広重など歌川派の作品1万点以上を含む3万点以上の浮世絵は彼が理事をつとめたボストン美術館に所蔵されています。

余談。このフェノロサやビゲローが日本美術の再評価に多大な貢献をしたエピソードは興味深いなあ。別に「海外から来て買い叩いた」のではなく、(廃仏毀釈も含め)国内で古美術の価値がどんどん下がっていったから安価に収集できたという。現代においてもそういう面があるのだろうし、日本庭園に関してもそう。日本人の自己評価の低さというのは150年前ももっと昔もそうだったのかなあ、と思う。

(2020年6月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

京阪石山坂本線 大津市役所前駅から徒歩9分
JR湖西線 大津京駅より徒歩15分

〒520-0036 滋賀県大津市園城寺町246 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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