“大本”の神苑“梅松苑”の中心部にある新緑/紅葉の美しい日本庭園。国登録有形文化財の巨大な神殿“みろく殿”や国指定重要文化財の古民家も。
大本 梅松苑“金龍海”について
「大本」(おおもと)は京都府綾部市を拠点に明治時代に開かれた新宗教団体。その本部の神苑「梅松苑」では緑の美しい日本庭園と国登録有形文化財「みろく殿」、国指定重要文化財「木の花庵」(旧岡花家住宅)などが見られます。 2022年春に初めて訪れました。
戦前の弾圧事件や明智光秀が本拠地とした亀岡市の『丹波亀山城』(亀岡城)に聖地(本部)が置かれていることでも知られている宗教法人「大本」。その発祥の地は綾部市で、1892年(明治25年)に開教しました。
綾部の中心市街地の南東にそびえる本宮山を御神体として、その山麓の開祖の旧宅地を中心として近代〜昭和時代に掛けて整備されていったのが神苑「梅松苑」。事務所で受付をすることで一般の人でも見学・拝観することができます。(事前予約で「みろく殿」等の建築内部の参観も可能)
神苑に入ってまず現れるのが神殿『みろく殿』(国登録有形文化財)。これがまたなかなか目にすることがない超巨大な入母屋造な和風建築で、桁行50m超、内部はなんと789畳もあるのだとか(“千畳敷”)。戦前にも同規模の「みろく殿」があったそうですが、事件で取り壊され、現在の建築は戦後の1953年(昭和28年)の竣工。
みろく殿の前に日本庭園が広がります。“金竜海”(きんりゅうかい)と呼ばれる池泉を中心とした池泉回遊式庭園で、“竜宮の乙姫の住処”を表現したものなのだそう。当初は大正時代の初めに作庭され、事件に際して一度埋め立てられたものの「みろく殿」の再建と同時期に復元され現在に至ります。
池中に浮かぶ大和島、大八洲、六合大島、沓島(めしま)、冠島(おしま)という5つの島と『塩釜神社』が鎮座する塩釜島(半島)は世界の五大陸にも見立てられていて、「大和島:四国・オーストラリア大陸」「大八洲:九州・アフリカ大陸」「六合大島:北海道・北アメリカ大陸」「塩釜島:台湾・南アメリカ大陸」。またそれぞれも異なるお社が鎮座。
表現している世界観はメジャーな神社・寺院の庭園とは異なりますが、基本のスタイルとしては滋賀県指定名勝『阿自岐神社庭園』や三重県指定名勝『伊奈冨神社庭園』、そして世界遺産『金閣寺庭園』のような“多島式庭園”。
池泉のほとりにもう一つある文化財の建造物が築300年、江戸時代中期の古民家(農家)をこの地に移築した『木の花庵』。「旧岡花家住宅」の名で国指定重要文化財で、現在は茶室として利用されているそう。
これだけの大きな神殿・聖地に面した庭園らしく植物、草花がとても美しい庭園。池泉を取り囲むモミジは新緑がとても美しく(きっと秋は紅葉がきれい)、そして木の花庵周辺の遠路は一面の苔が美しい。初春には“梅松苑”の名前の通りの梅の花が咲き誇り、今回訪れた5月には水路に咲くアヤメ、カキツバタの花もきれい!
また境内の奥にはもう一つの主要な建築『長生殿』があり、こちらも事前予約で内部見学が可能。1992年(平成4年)に竣工したこちらの和風建築も巨大。
ちなみに、綾部市を訪れて実感したのは(亀岡と比べても)大本がとても近い存在で地域に溶け込んでいるということ。近年、関東でも昭和年代作庭の新宗教団体の庭園が国指定文化財(国指定名勝)になった例もある。この庭園や巨大な和風建築目的な方もぜひ訪れてみて。
(2022年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR山陰本線 綾部駅より徒歩15分)
綾部駅より路線バス「大本神苑前」バス停下車 徒歩2分/「京都府総合庁舎前」バス停下車 徒歩7分
*綾部駅前にレンタサイクルあり
〒623-0023 京都府綾部市新町1 MAP