海外庭園専門誌の日本庭園ランキングで毎年上位にランクイン。藩主を迎えた建築(国登録有形文化財)と江戸時代の庭園が一体化した庭屋一如な“市中の山居”。
武家屋敷跡 野村家庭園について
「武家屋敷跡 野村家」(ぶけやしきあと のむらけ)は金沢市内の主要観光地の一つ・長町武家屋敷跡の町並みにある公開武家屋敷。その庭園が特に人気で、海外日本庭園専門誌《Journal of Japanese Gardening》の日本庭園ランキング《しおさいプロジェクト》では毎年上位にランクイン(最高は3位)。また建築も主屋・土塀が「旧野村家住宅」として国登録有形文化財となっています。
2023年に約3年ぶりに訪れたので、その際の写真を交えて紹介。
江戸時代には加賀藩前田家に仕える上流武士〜中流武士の武家屋敷が立ち並んでいた“長町武家屋敷”は現在もその土塀と石畳の路地がその当時の面影を残しています。
この「野村家」は戦国大名・前田利家の家臣だった尾張出身の野村伝兵衛信貞を初代とし、その後明治維新を迎えるまで十一代にわたり加賀藩の各奉行職を歴任した上級藩士でした。
江戸時代には3,000平方メートルもあったという野村家屋敷。明治維新後は武家制度の解体によって縮小・分割され、菜園や住宅街へ変わっていったそう。なので現在見られる庭園は往時から残った一部。
そして現在のお屋敷(主屋)も野村家の時代から残るものではなく文化財の登録上は大正時代の近代和風建築。その中心部にある格天井の部屋は昭和時代初期に加賀・橋立を拠点に北前船で栄えた豪商・久保彦兵衛によって大聖寺藩主を迎えていた上段の間・謁見の間(江戸時代後期建築)を移築したもので、加賀藩のお抱え絵師だった狩野派・佐々木泉景による山水画や大聖寺藩士・山口梅園による牡丹の襖絵が見どころ。
※なお、加賀市・大聖寺には同じく久保彦兵衛の屋敷が移築されたのが『蘇梁館』という和風建築があります。
そして屋敷をL字型に取り囲む庭園。決して同じ金沢の『兼六園』のような広い庭園ではないけれど、和風建築と日本庭園が調和した“庭屋一如”と称される光景がその人気の理由。縁側/ぬれ縁から眺める池泉鑑賞式庭園には鯉が悠々と泳ぎ、その奥には初代・野村伝兵衛が好んだという樹齢400年以上(江戸時代初期〜)のヤマモモやシイの古木が残ります。また、池に上段/下段をもうけて水の音を楽しめる構造も◎。
この池はすぐ隣を流れている“大野庄用水”から水が引き入れられています。どうやら長町武家屋敷にはこの用水から水を引き入れて作られた庭園がいくつかあったようで(長野市・松代のように)、非公開の金沢市指定名勝『西家庭園』は水源は同じくした池泉庭園。野村家の庭園も元々は(今ほど建築とは一体化していない)オーソドックスな池泉庭園だったのかもしれない。
また2階のお茶室“不莫庵”ではお抹茶をいただきながら庭園を見下ろすことができます。また宝物庫的な“鬼川文庫”では戦国時代に初代野村伝兵衛が着用していたと伝わる甲冑や刀剣、明智光秀・朝倉義景らからの書状などを展示。
インバウンドが戻ってきた2023年はひっきりなしに人が訪れていた野村家。朝一や夕方の閉館前などの来館が空間を独占するのにはオススメ!
(2015年9月、2017年5月、2020年9月、2023年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR北陸新幹線 金沢駅より2km弱(徒歩25分弱。市内各地にレンタサイクルあり)
金沢駅より路線バス「香林坊」バス停下車徒歩6分
〒920-0865 石川県金沢市長町1丁目3-32 MAP