
東京の美術館でも知られる数寄者・畠山一清の旧邸の新座敷が山梨に移築!京都の名園“四君子苑”の茶室の写しや茶庭/露地、山梨の名山を望むランドスケープも。
韮崎市茶室(即翁新座敷・悠久庵)について
「韮崎市茶室」(にらさきしちゃしつ)は山梨県韮崎市に2025年9月に開かれた公共茶室。東京の『荏原 畠山美術館』(旧・畠山記念館)で知られる昭和の茶人/数寄者/実業家・畠山一清の旧邸から移築された「即翁新座敷」(旧畠山一清邸新座敷/韮崎市指定有形文化財)と、京都の名園『四君子苑』の茶室の写し『悠久庵』、それらを結ぶ茶庭・露地庭園で構成されます。
2015年のノーベル生理学・医学賞を始め多くの国際的な賞を受賞、“微生物化学の第一人者”“日本の産学連携の先駆者”とも称される大村智博士。コロナ禍に話題になった「イベルメクチン」の発見~研究開発に携わった方でもあります。韮崎市名誉市民、山梨県名誉県民の第一号にも選ばれました。
そんな氏の出身地・山梨県韮崎市の神山集落で整備が進むのが『韮崎大村記念公園』。『韮崎大村美術館』と先に紹介した氏の生家『大村家住宅・螢雪寮』をコア施設に、天然掛け流し温泉施設、そば処、そして2025年には東京の『畠山記念館』(現『荏原 畠山美術館』)から移築された、昭和の実業家ゆかりの茶室「即翁新座敷」なども。
ここではその茶室群と茶庭を紹介。
大村博士の生家『螢雪寮』とその庭園『創新苑』。それらと隣り合う場所に2025年に開かれたのがこの茶室・庭園で、『創新苑』の“下の庭”でもあります。“上の庭”と同じく、「日本庭園協会賞」受賞歴のある地元・山梨の造園家、田中徳夫さん率いる田中造園作庭。また、露地・茶庭には東京の金綱重治(金綱造園事務所)さんも協力。
■即翁新座敷(旧畠山一清邸新座敷)
その“下の庭”の主たる建築が「即翁新座敷」。
東証プライム上場企業「荏原製作所」の創業者で、茶人・数寄者でもあった昭和時代の実業家・畠山一清。氏の東京・港区の旧邸は現在は『荏原 畠山美術館』となっていますが、文化財指定名(旧畠山一清邸新座敷)の通りこの建物も元は港区に建っていたもの。なお「即翁」というのは氏の茶人としての号。
現在の畠山美術館にも展示館以外にも氏の旧宅の一部が残りますが、2019年からのリニューアルにあたり旧宅の一部は解体されました。それがこの「新座敷」。以来、5年の歳月を経てこのたび韮崎市に移築・復元…!
しかし、なぜ韮崎市?という点について。近代の実業家兼茶人として有名な方は多く居ますが、そのうちの一人が阪急グループの総帥・小林一三。氏の出身は韮崎市。そして氏と即翁は茶人として交流が深かったという縁から韮崎市に移築されることになったのだそう。
この新座敷を中心に、連結した増築棟(水屋など)、庭門や腰掛待合と茶庭(露地)が新設。また併せて後述の茶室『悠久庵』も移築されました。
この新座敷、いわゆる「懸造」タイプの高床式の和風建築。元の所在地(白金台)も敷地内に傾斜・段差がある立地でしたが、移築されたこの地も緩やかな傾斜のある場所。
その広間(※お茶室利用時のみ入室可。庭園のみの観覧では見学不可)からの眺望が特に素晴らしい!元から眺望が意識された作りですが、この場では近年国の登録記念物となった『七里岩』と土木遺産『徳島堰』、そして山梨百名山の茅ヶ岳といった最高のランドスケープ。また、腰掛待合から階段を上がって茶席へと至る…といった構造もとても特徴的。
■悠久庵(ゆうきゅうあん/旧根津邸小間)
即翁新座敷の増築棟の東側に並ぶ四畳半のお茶室。こちらは、京都の名和風建築の一つ『四君子苑(北村美術館)』の茶室の写し。韮崎市内の根津家に作られたものを、大村智博士によってこの地に移築・韮崎市に寄贈されました。
こちらにも露地がありますが(※植栽はこれから)、その腰掛待合の左手側にある四角い石、こちらはなんと国宝『薬師寺東塔』を1,300年間支えた礎石。大村博士が薬師寺で講演したお礼で受け取った貴重な石造物がこのお庭の見所の一つとして活かされることになりました。
そんな歴史を感じさせる建築や石造物も素敵でこれだけで十分一見の価値あり!なのですが、この小間の奥の石垣。見た目でも迫力あるけれど、あえて「不自然に階段の様に登れるようになっている」所…庭園の裏ルートの様になっている所もすごく面白い…山登り好きな人や子供さんは喜んで昇り降りしたくなるはず。
数寄者ゆかりの名建築とともに、庭園も楽しんでみて。
(2025年10月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR中央本線 韮崎駅より約3km(駅前にレンタサイクルあり)
JR韮崎駅より路線バス「韮崎大村美術館前」バス停下車 徒歩5分
〒407-0043 山梨県韮崎市神山町鍋山1880-1 MAP
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