名主の滝の公園

Nanushi-no-Taki Park, Kita-ku, Tokyo

北区・王子の紅葉の名所…江戸時代に歌川広重も描いた東京都心屈指の滝石組と、明治時代に実業家のお屋敷に作庭された池泉回遊式庭園。

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名主の滝の公園について

「名主の滝公園」(なぬしのたきこうえん)はJR/東京メトロ・王子駅の北側に位置する北区の区立公園。施設名は“公園”ですが、江戸時代にルーツをさかのぼる豪快な滝を中心とした池泉回遊式の日本庭園です。

その歴史について。江戸時代、この地には王子村の名主(いわゆる「庄屋」格の豪農)の畑野家のお屋敷がありました。
現在も残る“女滝”“男滝”などの滝は武蔵野台地の崖線に沿った地形を生かして畑野家当主・畑野孫八が築いたもので、当初から地域の方々にも避暑地として開かれたそう(“名主の滝”の由来はそこから)。歌川広重(安藤広重)が1850年(嘉永3年)に出版した「絵本江戸土産」にもそれらしき滝が描かれました。

明治時代には貿易商・垣内徳三郎が畑野家から屋敷地を取得。現在見られる池泉回遊式庭園が作庭されたのはこの頃で、元の滝を活かしながら徳三郎が好んだ栃木・那須塩原の景色を模して渓流や渓谷、モミジの植栽で奥深い谷の風景が表現されました。現在もヤマモミジ/イロハモミジがあわせて100本以上ある紅葉の名所。

昭和年代には現在上野を中心に東京に複数店舗を構える『精養軒』の所有に。戦前は食堂があったものの、太平洋戦争の空襲で焼失。戦後に東京都が取得し、1960年(昭和35年)に都立公園として開園。1975年に北区に移管されました。

自由に散策できるし、東京の「都立庭園」と比べると武蔵野の自然が多く残る公園…って感じの雰囲気だけれど。池の広さ/巨大な自然石の多さ/滝の豪快さなどなど、お屋敷の庭園としてはめちゃくちゃスケールの大きい回遊式庭園。(ちなみに当初都立の公園として開かれた際には有料だったそうなので、「都立庭園」と同じ価値が見出されていたのかも)

その庭園の見所はやはり滝。東京都内でも屈指の8メートルの“男滝”をはじめ、女滝、独鈷の滝、湧玉の滝と4つの滝が残ります(水が落ちてるのは“男滝”のみ)。かつて王子には“王子七滝”と呼ばれる7つの滝があったそうで、その中で唯一残る遺構でもあります(同じ道沿いにある『王子稲荷神社』にも七滝の一つ“稲荷の滝”があったらしく、現在はその雰囲気を模した小さな滝と池泉があります)。

公園内の「名主の滝老人いこいの家」には“緑陰亭”“洗心亭”と呼ばれる貸室があるほか、男滝の近くに雰囲気ある茶室が。今回は近づけなかったのだけれど、こちらに露地庭もあるようなので次回また改めてチェックしたい。

(2022年10月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR京浜東北線/東京メトロ南北線 王子駅より徒歩8分(北口から)

〒114-0021 東京都北区岸町1丁目15-25 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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