七代目小川治兵衛が無鄰菴の前に手掛けた京都市指定名勝庭園。国登録有形文化財の和風建築と美しい七宝焼きも!
並河靖之七宝記念館・並河家庭園について
「並河靖之七宝記念館」(なみかわやすゆきしっぽうきねんかん)は明治〜大正時代に活躍した“七宝家”並河靖之の自邸と工房に開かれた記念館。七代目小川治兵衛(植治)作庭による庭園が「並河家庭園」として京都市指定名勝となっているほか、建造物や所蔵している七宝作品が国登録有形文化財となっています。また表通りからは虫籠窓、駒寄せなどの京町家の姿を残しており、京都市指定歴史的意匠建造物、景観重要建造物などにも指定。
東山駅から平安神宮・無鄰菴へと向かう途中にある施設なので前から行きたいなあ…と思っていたのですが、展示替えや休館日にぶつかり続け、2019年秋に初めて訪れました!
七宝というジャンルも正直あまり知らなかったのですが、あまりに繊細すぎる、そして鮮やかな色遣いに見惚れたし、小川治兵衛の手掛けた庭園も期待以上で大満足の施設…。庭園だけじゃなく展示目当てに今後も通いたい美術館。
そもそも七宝焼ってなんぞ?正しくはWikipedia参照なのですが、ざっくり言うと伝統的な金属工芸の一つ。陶磁器と比べても繊細に、そして艶があり光沢を帯びて見えるのはその素材・手法によるものなのか…。中でも色彩鮮やかだった並河の作品は近代という時代においても海外での人気も高く、万国博覧会を経て欧米にも多く輸出されたそう。
海外では七宝といえば“Namikawa”と認知された――と書かれる程、日本の七宝焼きの代表的アーティストだったのが並河靖之。元は川越藩の京都留守役の一家の出で、少年時代に並河家の養子に。並河家は『青蓮院門跡』青蓮院宮侍臣を務める家系で、靖之の美的感覚が養われたのはこのような皇族(後の久邇宮朝彦親王)との繋がりによるものとも言われます。
後年にはイギリスのエドワード8世(皇太子)も訪れたという並河靖之の自邸は明治時代の建造物で、主屋のほか工房・窯場が「旧並河靖之邸」として国登録有形文化財。それらを含んだ現存する建物内で並河家所蔵の美しく繊細な七宝焼き作品を鑑賞することができます。
そしてその庭園は七代目小川治兵衛(植治)が、出世作?となる『無鄰菴』の前に手掛けたとされるもので、その池泉回遊式庭園は植治が“琵琶湖疏水”を初めて利用して引かれたもの。その後手がける庭園と比べて規模は決して大きくないけれど、大きな飛び石が所々で用いられた飛び石や池の中の自然石、そして自然石を足場にして池にせり出す建造物…!これが庭屋一如ってやつか…?
「無鄰菴をきっかけに小川治兵衛はブレイク、それまでは普通のいち植木屋だった」という解説をこの庭園を訪れる前に読んだのですが――この庭園内での表現を見ると元からすごかったんだと思う。超人気バンドのブレイク前のインディーズ時代の作品も大体名盤、みたいな?
建物が池泉にせり出してる感じは植治が手掛けた山口市の『松田屋ホテル庭園』を思い出すし、池の一部が浅瀬になっていてそこを通じて建物の下に“流れ”が通じてゆく様は、後に無鄰菴の作庭でも活かされているのかなあ〜と。
この庭園に小川治兵衛が携わったのは“自宅が隣同士だったから”。実際地図で見ると今も並河七宝記念館の隣に造園植治が位置していました。そうだったのかー。庭園内に多く配されている様々な石造物が小川治兵衛のこだわりなのか並河靖之の美的感覚によるものかは不明ですが…そのセンスも含めて、“庭園美術館”という名ではないけどそんな言葉がピッタリの場所だと思いました。今回見惚れた“七宝焼き”の体験もいつか行きたい!
(2019年10月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
京都市営地下鉄東西線東西線 東山駅より徒歩2分
京阪本線 三条駅より徒歩約10分
最寄バス停は「東山三条」「神宮道」下車徒歩3分
〒605-0038 京都府京都市東山区三条通北裏白川筋東入ル堀池町388 MAP