中世と現代の2つの名庭園。室町時代の画家・狩野元信作庭の枯山水庭園(国指定名勝)と、中根金作の“余香苑”。
妙心寺 退蔵院庭園について
妙心寺の塔頭寺院「退蔵院」(たいぞういん)は『大心院』、『桂春院』とともに年間を通して拝観可能な寺院。『足立美術館庭園』で知られる中根金作が作庭した“余香苑”と、室町時代の画家・狩野元信による国指定名勝の庭園“元信の庭”、石庭“陰陽の庭”があります。2019年に約4年ぶりに拝観しました!(本当はこの春も紅しだれ桜を観に行きたかったけど自粛…)
京都を代表する寺院の一つ『妙心寺』は建武の新政で知られる建武年代(1337年)の創建。現在も多くの塔頭が残り大きな寺町を形成しています。
「退蔵院」はその中では三門からすぐそばの立地で、創建は室町時代の1404年(応永11年)。越前国の豪族・波多野重通により建立。現在残る方丈はその後の桃山時代~江戸時代初期に再建されたものですが、国指定重要文化財となっており、内部には狩野派・狩野了慶による襖絵が残るそう。
■元信の庭(4~6枚目)
まずは方丈西庭“元信の庭”。室町時代の画家・狩野元信の作庭と伝わる枯山水庭園。狩野派初代・狩野正信の息子として残した絵画も多くが国の重要文化財となっていますが、この庭園は70歳を過ぎた元信の最後の作品、とも言われます。この時代の他の庭園を思い返すと、奥の築山と比べて手前の石組(蓬莱島)の主張が強く感じるのがこのお庭の特徴。
■陰陽の庭(7~11枚目)
“余香苑”へと至る途中にある、砂の色が異なる2つの石庭。白砂による“陽の庭”には7つ、“陰の庭”には8つの合計15石が配されています。そしてそのお庭の中央にそびえるのが、大きな紅しだれ桜!この大きさで樹齢は50年を過ぎたところなのだろう。
■余香苑(1・12~18枚目)
そして1965年(昭和40年)に中根金作により作庭された“余香苑”(よこうえん)。緩やかな斜面の渓流から湖に流れ込んでくるような自然風景を表した?池泉回遊式庭園。
その斜面にはぎっしりと低いサツキが植わっているので――6月頭頃にはカラフルな姿になっているのかも。そして最下部には藤棚があるのでこれも晩春には見頃を迎え、上部にある藁葺きの四阿もかわいい。
庭園のほか、室町時代に画僧・如拙が描いた国宝『瓢鮎図』を所蔵。また先に書いた狩野了慶の襖絵は現在は損傷を防ぐため取り外されており、現代の若手絵師・村林由貴さん(椿昇さんに師事しているアーティスト)が新たな襖絵を描いた『退蔵院方丈襖絵プロジェクト』は2019年に文化庁にも表彰されました。『大雄院』の襖絵プロジェクト共々、寺社仏閣ファンだけでなくアート好きにも足を運んでほしいお寺さん。
(2014年7月、2016年2月、2019年10月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)