妙蓮寺庭園“十六羅漢石庭”

Myoren-ji Temple Garden, Kyoto

かの“桂離宮”の庭園を手掛けた僧・玉淵坊日首が、豊臣秀吉に与えられた名石“臥牛石”を中心に作庭した枯山水庭園。

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妙蓮寺庭園について

「妙蓮寺」(みょうれんじ)は鎌倉時代に創建された本門法華宗の大本山寺院。江戸時代に妙蓮寺の僧・玉淵坊日首(あの『桂離宮』の造園にも関わったとされる人物)により作庭された枯山水庭園“十六羅漢石庭”があるほか、長谷川等伯一派による障壁画(国重要文化財)があります。

近隣の国指定名勝『本法寺庭園』には何度か訪れていましたが、妙蓮寺の庭園のことは知らず…。2019年春に初めて訪れました!

その歴史について。鎌倉時代の1295年(永仁3年)に柳屋仲興道妙蓮が日蓮の孫弟子・日像上人に帰依し、自邸を“柳寺”というお寺にしたのがはじまり。
当初は現在地よりも南方、地下鉄・五条駅の方にありましたが、室町時代には戦乱などを経て四条大宮へ移転、そして1587年(天正15年)に豊臣秀吉“聚楽第”の造営に伴って現在地に移転しこの場に落ち着きました。

室町時代には皇室や足利将軍家にも参詣された格式高い寺院であり、江戸時代には塔頭寺院も27を数えたそうですが、江戸時代中期の大火にによりその多くが焼失。現在残る塔頭は8つに減っています。それでも堀川通からすぐの場所に広い敷地を持つ京都の大寺院の一つ。

現在の境内の建造物の多くは大火の後に再建されたものですが、大火を免れた江戸時代初期の鐘楼をはじめ、歴史的建造物が多く残ります。
また国指定重要文化財の長谷川等伯の一派による障壁画や、前述の『本法寺庭園』の作者である本阿弥光悦の筆による「立正安国論」「始聞仏乗義」、伏見天皇の筆による「法華経」が所蔵・展示されている宝物殿は例年期間限定で特別公開。

特に等伯の障壁画はたまらなかった…金の輝きが美しい『鉾杉図』『松桜図』はまた見に訪れたいなあ。気持ちでしかないけど、等伯の障壁画プリントされた便箋もお買い上げ…。

そして枯山水庭園『十六羅漢石庭』は妙蓮寺の僧で、造園においては江戸時代の代表的作庭家・小堀遠州に師事した玉淵坊日首による作庭。
この玉淵坊、小堀遠州や明治時代の小川治兵衛と比べると名前が挙がることはほとんどないのですが、妙蓮寺に於いては《桂離宮の造園を指図した》、そして国指定名勝になった同じ京都の『知恩院庭園』の作庭もされている、けっこう重要な作庭家。

豊臣秀吉によって伏見城から与えられたという名石「臥牛石」(冒頭の写真の中央奥)を中心とした庭園になっていて、その青石を涅槃像に、残りの石を羅漢に見立て仏教の世界が表現されています。
白砂に配された石を眺めるにはどの季節でも見応えありそうですが、奥のサツキの花が咲く頃に見たらまた違った印象を受けるんだろうなあ。

“十六羅漢石庭”という名前なのに、涅槃像を現した青石を除けば羅漢は15しかない――といった点については、妙蓮寺のサイトでも解説されていますが、拝観をするとまた異なる解説の文献をもらえますので、拝観した際には是非そちらもご覧になってください!また妙蓮寺のパンフレットや看板には名前が出てきませんが、『銀閣寺』の庭園を手掛けたことで知られる善阿弥も室町時代には造園に携わったそう(現在地に移転する前の庭園かな…)。

また玄関の前庭(写真3枚目)は現代の作庭家・“京都庭常”平岡宏歸さんによる作庭の“妙浄の庭”も。
2019年春には初の庭園ライトアップも開催。今回夜には訪れなかったけど、写真を見る限りは素敵なライトアップが施されていたようで…。また訪れたい!

(2019年3月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

京都市営地下鉄烏丸線 鞍馬口駅より徒歩13分、今出川駅より徒歩15分
最寄バス停は「堀川寺之内」バス停。下車徒歩2分

〒602-8418 京都市上京区寺之内通大宮東入ル妙蓮寺前町875 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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