環境彫刻の巨匠、ダニ・カラヴァン設計によるアートな公園は、棚田など地域に溶け込むランドスケープも。
室生山上公園芸術の森について
「室生山上公園 芸術の森」(むろうさんじょうこうえん げいじゅつのもり)はイスラエル人彫刻家、ダニ・カラヴァンの設計・監修の元、2006年に造営された公園。国宝寺院“女人高野”こと『室生寺』からは約20分ほど坂を登った場所にあります。
昨年なにかの雑誌で知って、2020年に行きたいな~と思っていた場所。屋外のアート作品を本国イスラエル以外にもヨーロッパ各国(特にフランス)に残したアーティスト、ダニ・カラヴァンは日本では『霧島アートの森』にも雄大な風景をのぞむ作品“ベレシート(初めに)”を手掛けていたり、『札幌芸術の森公園』にも“隠された庭への道”という作品を作庭している(意識していなかったけど、両方足を運んでいる)。
このプロジェクトは1997年当時、室生村の過疎対策として国土庁の支援の下『むろうアートアルカディア計画』が策定されたことからスタート。室生村出身の彫刻家・井上武吉が構想した「森の回廊計画」「山の上のモニュメント構想」を核に、井上武吉氏とも親交の深かったダニ・カラヴァンが招かれ、《アート×公共事業》という当時では例の少なかったプロジェクトを実現(こんなアートな公園なのに、宇陀市立公園でもあるんですよねー!)。またこの公園が山の“地すべり対策”を果たしている点もとても重要。
約8ヘクタールという広大な敷地の中にはさまざまなモニュメントが配されています。冒頭の写真、“太陽の塔”“天文の塔”と名付けられたモニュメントと左右へと連なるアーチ“太陽の道”は、古来伊勢と奈良をつないだ北緯34度32分の道を視覚化したもの。
その他、キービジュアルの一つである“螺旋の水路”や元々この地にあったという棚田、池泉回遊式庭園のようになっている“ピラミッドの島”などなど。自然の山に埋め込まれたようなビジターセンターの建築も良い感じ。
関西の中でも僻地だし、平日に訪れたので正直ほとんど人が居ないだろうと思ってたんだけど――意外と人が居て!老夫婦から家族連れ、若いカップルや女性二人組など幅広い客層。アートな公園としてすでに“インスタ映え”層にもじわじわと知られているらしい(自分も人のこと言えない)。公園の造形だけじゃなく、その雰囲気も大好きな『モエレ沼公園』みたいだな~って思った。
一方で。園内には“弘法の七ツ井戸”というスポットも。弘法大師空海は日本各地に井戸・名水を残していますが(京都『楊谷寺』や徳島『童学寺』など)、ここもその一つかな。空海が思いを寄せた室生寺がすぐ近くにあることからも関連ないとは言えない。杉並木の中の石積みなんかも歴史を感じさせる――そんな風に五感を刺激させられるランドスケープ。好き。また行く。
(2020年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)