無鄰菴庭園Murinan Garden, Kyoto

山縣有朋が“植治”七代目小川治兵衛と共に作り上げた、東山の借景が美しい“近代日本庭園の傑作”。国指定名勝。

庭園ギャラリーGarden Photo Gallery

無鄰庵庭園について

「無鄰菴」(むりんあん)は明治27〜29年(1894年〜96年)に山縣有朋の別荘として造られた邸宅と庭園。東山を借景にのぞむ池泉回遊式庭園の作庭は七代目小川治兵衛(植治)。「無鄰菴庭園」として国指定名勝で、東京の『椿山荘庭園』、小田原の『古稀庵庭園』と併せ“”とも言われます。
これまで何度か訪れていますが、2019年は夏と秋にそれぞれ足を運びました!前回訪れた2016年の写真も混ぜながら紹介。また冒頭の写真はイベントや部屋を借りた際のみ上がれる2階からの貴重な眺め!

この無鄰菴は一部では“第三無鄰菴”と表記されていることも。その名の通り三代目。第二無鄰菴は高瀬川二条の『がんこ高瀬川二条苑』に、初代無鄰菴は“奇兵隊のふるさと”山口県下関市の吉田にある高杉晋作の菩提寺『東行庵』となっています。当初“隣に家がなかった”というロケーションから名付けられた――そうで、「どんな場所なんだろう…」と思いを巡らせた結果2019年11月に初めて初代無鄰菴も行ってきました(後日掲載)。
三代に渡ってこの名を用いたということはよっぽど山縣はこの名前をすごく気に入ったのだろうし、初代無鄰菴、この無鄰菴、そして古稀庵や椿山荘。いずれも山が見える風景や斜面・高低差のある場所だなあと思う。…第二無鄰菴は浮いてる…すぐに手放した、というのがわからんでもない(笑)

主観の話から。無鄰菴庭園を“近代日本庭園の最高傑作”と言う人も中には居て、自分の狭い範囲で言うと東京で出会った植木屋さん、造園の設計をされている方で「無鄰菴が一番好き」という方が何人かいらっしゃった。
東京には素晴らしい大名庭園がいくつもあるし、京都にも数多く素晴らしい寺社仏閣の庭園がある。その中であえて無鄰菴を挙げるのはなぜなんだろうと思うと――『都市における住宅庭園の最高傑作』なのかなあと。

お庭が欲しい、といったニーズを紐解く時、例えばアート性・宗教性が必要とされない時には樹木が少ない石庭はそぐわない(のだと思う)。生活感だとか自然だとか癒やしだとか、そんな風に考えると、芝生の空間。周囲からの遮蔽性。その中での開放的な風景。それらが無鄰菴では全て実現されている――

そして平庭の中にもすごく緩い斜面を作り、借景の東山への“連続性”を表現していることで『空間以上の広がりを感じられる』風に感じさせる空間構成。それが自分の身の回りの方が『一番好き』と評しているポイントである。
『借景』という言葉が最も似合う庭園の一つ。最近「庭園のどこか好きか」と聞かれることも多くなり――「うーん、空間、雰囲気ですかねえ?」とか答えるんですけど(自分でもよくわかってない)、個人的に好きな庭園上位に福岡の『清水寺本坊庭園』を挙げている一番のポイントって無鄰菴と同じくお庭から借景の山への連続性――だったりして。こういう景色をずっと眺めていたい。

主観の話はこれ位にして庭園の説明。無鄰菴は公式サイトでかなり詳しい説明がされているので詳しい内容はこちらに任せて簡潔に。
無鄰菴庭園の特徴として挙げられるのは、先にも書いた『東山の借景』『早々に庭園に芝生が取り入れられたこと』、そして『琵琶湖疏水からの“流れ”』。そしてこれらを、後に名作庭家として名を馳せる小川治兵衛が主導したのではなく、山縣有朋本人が細かく指示を出してこだわって造られた――という点。

何気ない芝生もその時代の京都では、京の人間ではない山縣有朋によってそれまでの常識を破った(よく言えば欧州視察などを経て最先端の)形式であり。また南禅寺界隈の別荘庭園で常時公開されているのは無鄰菴ぐらいなので、琵琶湖疏水からの流れについては正直まだよくわからない点が多いのだけど、京都の近代化とこの庭園は強く紐付いているらしい、と言うことはわかる。

なお近代和風家屋に隣接する洋館も明治時代に建てられたもので、2階には江戸時代初期の狩野派による金碧花鳥図障壁画に囲まれた部屋があり、そこでかつて、伊藤博文、桂太郎、小村寿太郎により日露戦争へ向けた“無鄰菴会議”が行われました。そして洋館からすぐの場所にある『燕庵』写しの茶室から有朋は比叡山を眺めていたそう。

近代を代表する造園家・7代目小川治兵衛()もこの庭園をきっかけにブレイクしたと言われます。近隣にある『並河家庭園』を見ると「元々めちゃくちゃセンスはある方だったんだろう」とは思うけれど。無鄰菴を手掛けたその頃、植治は35〜6歳。人生これからですね。と思いたい。
無鄰菴は昭和年代に山縣有朋から京都市に寄贈され現在所有。『南禅寺』界隈の庭園を数多く管理する植彌加藤造園さんが指定管理者として運営されています。より詳しく庭園についてガイドしていただけたり、毎月28日には35歳以下は入場無料(!)という試みも。イベント情報は公式サイトよりチェック!

(2013年1月、2016年5月、2019年8月・10月・11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

京都市営地下鉄東西線 蹴上駅より徒歩6分、東山駅より徒歩10分
最寄バス停は「南禅寺・疏水記念館・動物園東門前」バス停 徒歩3分

〒606-8437 京都府京都市左京区南禅寺草川町31 MAP

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