“民家の向井”の異名を持つ昭和の洋画家・向井潤吉の旧邸。住友家や総理大臣邸も手掛けた建築家・佐藤秀三設計の和風建築と、貴重な世田谷の自然を残す雑木の庭園。
向井潤吉アトリエ館(旧向井潤吉邸)について
「向井潤吉アトリエ館」(むかいじゅんきちあとりえかん)は昭和時代~平成初頭に活躍した洋画家・向井潤吉の旧邸に1993年(平成5年)に開館した東京・世田谷区立世田谷美術館の分館。戦前からの世田谷の自然をわずかながら伝える、緑豊かな雑木の庭があります。
2023年5月に初めて訪れました。庭園として広くて目立つ…という場所ではないかもしれないけれど、昭和年代の山荘風の和風建築が緑に覆われた雰囲気がめちゃくちゃ良い!(&どこへ行っても人で賑わう東京の中で、来場者も少なく…施設的には良いことではないけど来場者としては落ち着いて見られて◎)
戦前から多くの美術家がアトリエを構えた世田谷。幾つかの美術家の旧宅や跡地が世田谷美術館の分館として利活用されています。その一つが「向井潤吉アトリエ館」。
明治時代の京都で生まれ育ち、1933年(昭和8年)から1995年(平成7年)に亡くなられるまでの約60年間は東京の世田谷・弦巻に住居を構えた洋画家・向井潤吉。戦後は時代の変化~経済成長とともに失われていった日本各地の風景と古民家の油彩画を描き続け、“民家の向井”の異名も。
その晩年に自邸の一部(住居兼アトリエ)と自らの作品を寄贈して開かれたのがこの向井潤吉アトリエ館。氏が創作活動を行なった自宅の雰囲気が感じられる空間の中で、寄贈された作品を中心とした企画展が開催されています。
なお現在残る邸宅は1962年(昭和37年)に再建されたもの(その前年に火災で古い建物は焼失)。建物内の写真は紹介できないのだけれど、“近代数寄屋建築”以降の昭和中期の和風建築が好きな人は絶対好きな空間で…!設計は向井潤吉と親交のあった建築家・佐藤秀三。木造大屋根の特徴は“佐藤秀調”とも呼ばれたとか。
そんなスタイリッシュな和風建築の前には庭園も。飛び石と緑によるシンプルなお庭ながら、高く育ったクヌギ/コナラ/ケヤキなどの姿は住宅地へと変貌した世田谷・弦巻の地においては戦前からの“武蔵野/世田谷の自然”を残す貴重な空間。
自然風な植栽と少しだけ苔むした石畳/石積のアプローチも和洋折衷の独特な雰囲気でとても好き…。東京に住みながら、少し喧騒に逃れた空間で美術作品やお庭を眺めたい人にこっそりオススメしたい場所!
(2023年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)