
国登録有形文化財の近代和風建築を活用したカフェは地元食材を活かし身体に優しいメニューが地域の女性に人気…薩摩藩の武家屋敷街“麓”のカルチャーを感じる庭園も。
町家カフェ もちなが邸(旧持永家住宅)庭園について
「町家カフェ もちなが邸」は宮崎県都城市にある文化財カフェ。明治時代の近代和風建築『旧持永家住宅』が活用され、そのお庭を眺めながらお食事することができます。
薩摩国/日向国/大隅国〜薩摩藩を長きに渡り治めた大大名・島津氏の発祥の地・都城。その中心部には『都城島津邸』とその庭園も残ります。
そんな中心市街地から北西に約7~8kmに位置する「もちなが邸」。その距離や最寄駅からの距離だけで言えば「なんにもなさそう」な場所…なのですが、都城市に編入した旧「荘内町」(庄内町)の中心部に建ち、同じく国登録有形文化財の近代寺院建築『願心寺』が同じ並びにあります。
明治時代の始めに旧・薩摩藩から“地頭”として都城に赴任したのが、後に山形県令/福島県令/栃木県令を歴任する三島通庸。その三島がまちづくりに注力したのが、都城の市街地ではなく庄内町などの郊外。この持永家は三島の求めに応じて庄内に移住し、当地を代表する商家として庄内の発展に貢献しました。
そんな名士の邸宅として、1907年(明治40年)に建立されたのが現在残る「旧持永家住宅」で、カフェ等で活用されている隠居棟と、裏手に回るとその立派さが分かる「門および石塀」が国登録有形文化財。この石垣を手掛けた石工は鳥取県出身の徳永長太郎。薩摩国出身の政治家/男爵・前田正名に呼ばれて庄内に赴任、先の『願心寺』の山門・本堂・石垣、その他の町内の石塀・石垣の建築にも関わったそう。
お食事スペース、憩いの場となっているのが隠居棟の客間。欄間の彫刻や凝った書院窓、天袋の日本画やピンク色(元はベンガラ?)の床の間、そして照明は洋風でシャンデリア…そんなデザインから持永家の豪勢さが感じられます。
そんな客間/お食事スペースから眺められるお庭も地域性が感じられる。規模は大きくない“町家のお庭”ですが――いわゆる“京風”の町家の庭ではなく、江戸時代に薩摩藩内に多く作られた武家屋敷街「麓」(ふもと)の武家屋敷に作られたお庭の流れを汲んでいる(と感じる)。手前に平庭、背後に小さな築山を設けて、そこにツツジ・サツキの刈込やソテツを主体とした植栽、化燈籠を配した鑑賞式庭園。『知覧麓』や『志布志麓』、あと飫肥の城下町に近いカルチャーを感じるし、京都で修行した庭師により作庭された『願心寺』の庭園とはだいぶ異なるのが面白さ。
訪れた日も平日ながら開店早々に満席。ちなみにカフェ以外にも地域で採れた特産品・農作物・お肉の販売所もあり、カフェではなくそちらを利用する地元の方の多さもとても印象的でした。地元・宮崎の方に末永く利用されて欲しいスポット…!
(2025年1月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR日豊本線 都城駅/西都城駅より路線バス「庄内郵便局」バス停下車 徒歩1分
JR都城駅/西都城駅より約8km(まちなか交流センターにレンタサイクルあり)
〒885-0114 宮崎県都城市庄内町12625 MAP
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