都城島津邸庭園

Miyakonojo Shimazu-tei Garden, Miyakonojo, Miyazaki

薩摩/大隅/日向の大名・島津氏の分家“都城島津家”の本宅と庭園。昭和天皇皇后両陛下も御宿泊された近代和風建築は国登録有形文化財。

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都城島津邸について

「都城島津邸」(みやこのじょうしまづてい)は戦国時代〜江戸時代の長い年月、南九州で一大勢力をほこった大名・島津氏の都城分家(都城島津家)が明治時代以降を過ごした本邸。近代に建築された主屋・離れをはじめ8棟が国登録有形文化財&都城市指定文化財で、その前には日本庭園も広がります。

2022年1月に初めて訪れました。都城を訪れたのも9年ぶり!島津氏=鹿児島のイメージが強いけれど、都城は“島津家発祥の地”なんだそう。

その歴史は鎌倉時代のはじめ、鎌倉幕府に仕える御家人だった惟宗忠久。日向国・大隅国・薩摩国の守護&その地域にあった摂関家・近衛家の領地(荘園)“島津荘”の地頭に任じられたのを機に島津姓を名乗り(島津忠久)、都城に『祝吉御所』『堀之内御所』を造営し移り住んだと伝わります。

“都城島津家”の歴史は南北朝時代から。島津氏四代目・島津忠宗の六男・島津資忠(北郷資忠)が時の将軍・足利尊氏より都城の地を与えられたのを機に“北郷”姓を名乗るように。
その後は後に『飫肥城』に入る伊東氏らとの争いが続きますが都城を守り、江戸時代に入り17代目・忠長の時に薩摩国の島津本家の命で“島津”姓に復帰。以来“都城島津家”として合計29代に渡り存続。近代には男爵に。

都城がユニークなのはあくまで“大名島津家の城下町”や薩摩藩独自の“麓・外城”(出水麓志布志麓など)ではなく、“大名の分家のド広い領地”として構成された街という点…まあ庭園の話とはあんま関係ないですけど。

明治維新〜版籍奉還後は都城の領地を返上することになり鹿児島へと移住した都城島津家ですが、地元民の懇願によって1879年(明治12年)に都城に戻り、『早鈴大明神』という神社の跡地だった“芳井崎”と呼ばれた現在地に屋敷を造営。
最も古い建物は幕末の1867年(慶応3年)建築の剣道場で、屋敷造営の際に移築されました。そのほかの御門(表門)・主屋・離れ・石蔵・外蔵・社の文化財建築は明治時代〜昭和の半ばまでに建てられたもの。

主屋(本宅)は明治時代に建てられた後に1935年(昭和10年)/1954年(昭和29年)とそれぞれ増改築。当初の設計施工は大林組で、担当は松本儀八
戦後の1973年(昭和48年)には昭和天皇の御宿泊所となり、その際に大改装されたのが現在の姿。(昭和の中頃でも高級旅館とかでなく個人の自宅を宿泊所にしたこともあったのか…)

目の前に庭園をのぞむ“昭和天皇皇后両陛下御使用のお部屋”や2階の“御宿泊の間”は和洋折衷の意匠が、そして両陛下も使用した浴室も贅を尽くした感が伝わる(その他戦前にも皇室・閑院宮家が宿泊されたことも)。
でも一番かっこいい意匠は28代目当主・島津久厚の母、恭子さんの部屋。決して広くないながらも襖絵や都城出身の画家・大野重幸デザインの欄間がめちゃくちゃ良い!

本宅の前には建築と同時期(昭和の前期・中期)に鹿児島より招いた庭師により作庭/改修された庭園があります。建物から緩やかに下る芝生の斜面は近代日本庭園っぽさもあり、時代は異なるけど島津家の大名庭園『仙巌園』との結びつきも感じる。東京の『旧島津公爵邸』とかも。

2階や縁側から庭園を正面に眺めると高木が生い茂っているけれど、かつてはもっと見通し良く、これらは天皇陛下の警備の必要性から目隠しの為に植栽されたものなのだそう。一角(南東方面)だけ開けていて、山々の借景をのぞめる。約5,000平方メートルの敷地、現在はけっこう広い駐車場があるけどここもかつては庭園の一部だったのかもなぁ。

同敷地に併設する『都城島津伝承館』は、宮崎県指定有形文化財となった約1万点の“都城島津家伝来史料”を中心に、鹿児島の島津本家に関連する史料・美術品を収蔵、展示する施設。
その中には国指定重要文化財となっている武具“紺糸威紫白肩裾胴丸大袖付”や“朝鮮国書”も。そして他に石蔵を用いた“石蔵カフェ”もあります。鹿児島の島津家ゆかりの庭園を見た後、都城にも足を伸ばしてみて。

(2022年1月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR日豊本線 西都城駅より徒歩20分(*駅にレンタサイクルあり)
JR日豊本線・えびの高原線 都城駅より徒歩30分(*駅にレンタサイクルあり)
西都城駅より路線バス「島津邸入口」バス停下車すぐ

〒885-0055 宮崎県都城市早鈴町18-5 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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