日本人より欧米の観光客に人気…?被爆建物に登録の寺院建築の残る広島の紅葉の名所寺院。昭和の代表的作庭家・重森三玲作庭の庭園“補陀落の庭”も。
三瀧寺庭園“補陀落の庭”について
「龍泉山 三瀧寺」(みたきでら)は広島市中心部の北西部に位置する三滝山(宗箇山)の中腹に位置する高野山真言宗の寺院。通称は「三滝観音」。広島市の被爆建物リストにも登録されている仏閣建築が残るほか、広島県指定重要文化財の三滝寺多宝塔、昭和を代表する作庭家・重森三玲による庭園「補陀落の庭」があります。中国三十三観音第13番札所。
広島市内の紅葉の名所やハイキングコースとして地元の方に知られる三瀧寺。一般的な「広島の観光スポット」としての知名度は低いかもしれませんが、実は海外(欧米)の観光客が多く訪れています。(と、2024年に再訪した時に感じた。日本人より外国人の方が多い…!)
その歴史について。平安時代初期の809年(大同4年)に弘法大師空海の創建と伝わります。江戸時代には、「茶道宗箇流」の祖で広島藩家老もつとめた武将・上田宗箇(『縮景園』など国指定文化財の庭園も残している作庭家でもある)がしばしば訪れたそうで、宗箇が山頂に松を植えたことから今日は「宗箇山」とも呼ばれます。
時は過ぎ1945年8月6日。原爆の爆心地から約3kmのこのお寺も爆風によって多大な被害を受けました。しかしながら全壊は免れた、想親観音堂・鐘楼・稲荷社・三鬼権現堂・鎮守堂(江戸時代末期~明治時代初期の建築)が被爆建物に登録されています。(客殿・本坊などRC造の建築は昭和中期以降に新たに再建されたもの)
また境内の序盤、丘の上に現れる多宝塔は広島県指定重要文化財で、元は和歌山県の『広八幡神社』にあった室町時代(1526年・大永6年)の建築を原爆死没者の慰霊のために移築されたもの。多宝塔内部に安置されている木造阿弥陀如来坐像は国指定重要文化財で、毎年8月6日に御開帳されます。
紅葉の名所と言われる通りモミジがそこかしこに植わり、都心部から近いながらも深山幽谷の景を感じられる境内。本堂/鎮守堂/三瀧権現堂へと至る坂の途中には重森三玲が昭和30年代に作庭した庭園“補陀落の庭”があります。
三瀧寺の名の由来ともなった三つの滝の一つ「梵音の滝」を背後に持ち、そこからの流れを中心とする池泉鑑賞式庭園。手前にある茅葺屋根の茶堂から眺めるのが本来の視点場で、普段は茶堂にも庭園内にも立ち入れませんが、参拝者は通路から眺めることができます。その上部には少しオリエンタルな六角堂も。
上田宗箇の過ごした徳島・和歌山に残る古庭園からの強い影響を受けた重森三玲もまたこの宗箇山をたびたび訪れたようで、同じ宗箇山の高台部にあるレストラン『桜下亭』にも三玲の作庭の庭園が残ります(*利用は予約制)。合わせて訪れてみて。
(2018年3月、2024年6月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR可部線 三滝駅より徒歩15〜20分
JR山陽新幹線 広島駅より路線バス「三滝観音」バス停下車 徒歩5〜10分
JR横川駅より約2km ※広島市内には「ぴーすくる」というシェアサイクルがあります。
〒733-0805 広島県広島市西区三滝山411 MAP