海外の日本庭園専門誌ランキングで2年連続3位の人気庭園は、明治時代創業の料理旅館の出雲流枯山水庭園。
皆美館・庭園茶寮みな美について
「皆美館」(みなみかん)は松江城下の宍道湖畔に明治時代に創業した老舗旅館。宍道湖を借景とする枯山水庭園はアメリカの日本庭園専門誌のランキング『しおさいプロジェクト』で例年上位、2018年~2019年にかけては3位にランクインするなど高い評価を得ています。
2020年11月、約4年ぶりに島根県へ。そして9年ぶりに松江を訪れました。松江の中心地にあるこの料理旅館は1888年(明治21年)に皆美家当主・皆美清太郎により創業。“客のこころになりて亭主せよ”という松江藩七代目藩主・松平不昧公の言葉を家訓に、現在まで130年以上の歴史をほこります。
宿泊は1泊約2万円~という水準というのもあって、同じランキングの常連『足立美術館』と比べて登場する機会は少ないのですが、今回紹介する主庭は皆美館の一階で営業されている“庭園茶寮みな美”の利用でも鑑賞することができます。
…ということに気づいて「これなら行ける…!」と思った(笑)松江藩主・松平不昧公好みという名物の鯛めし御膳で2,500円ほど。鯛めしはもちろん、鯛めし以外のボリュームもなかなか…!これで2,500円なら安い。
近代~昭和年代にかけて島崎藤村、志賀直哉、小泉八雲、高浜虚子、河井寛次郎、芥川龍之介、武者小路実篤、尾崎士郎、岡本太郎など多くの著名な文人墨客が訪れ、中でも島崎藤村の名は“藤村の間”として残っています。
また山口誓子が宍道湖について詠んだ“鴨群れて浮く これほどの 奢りなし”という句はのれんにもなっていた。
建物のエントランスから和風庭園らしい植栽があるのですが、主庭は建物の奥。宍道湖を背景に、樹齢200~300年のマツを中心とした白砂青松の日本庭園が広がり、旅館の客室のみならずレストランフロアから眺めることができます(食事後は歩くことも)。
参考記事『100年経営に極意あり!長寿企業の秘密 伝統を守りながら挑戦を続ける』(日商 Assist Biz)に明治時代の創業時の庭園の写真があります。明治時代の写真だと元は雲州平田の『康国寺庭園』のようなシンプルな“出雲流庭園”だったのかな、と感じますが――その写真と比べると手水鉢や灯篭の位置が変わっているし、過去の航空写真を何パターンか見比べると石張~苔のエリアはこの10年でも改修されたものみたいだけど。昭和の戦前には現在の庭園の原型が出来ていた様子。
1階フロアからだと宍道湖の借景も宍道湖大橋でカットされてしまっていて“大橋川を借景とした”という印象の方が強くなるけど、それでもこれだけ大きな河川を借景にしている庭園も日本国内にはそうない(『本楽寺庭園』ぐらいかなあ。印象が近いのは琵琶湖を借景とした『居初氏庭園』)。
湖の更に向こうには山の借景も見られそうなので――きっと2階より上の客室から眺めたら雄大さが段違いかも。なお2室限定の“美文”という客室でしか見られない庭園があるようなので、予算ある大人には宿泊を推したい。
唯一気になるのは庭の西側を眺めた時の生命保険会社の看板。公式の写真だと写り込んでいないので――近年建ったのかな…と思って過去の航空写真見てたら2009年の時点では既にこのビルも存在してる(てことは、公式写真は加工で消してるってことか)。マツはあえて成長しないよう低く保たれているそうだけど、この部分だけでも隠せたらいいのかなと…。
また皆美館と同じ系列(別館)の玉造温泉『佳翠苑皆美』の庭園も“しおさいプロジェクト”では高評価。後日玉造温泉の庭園も紹介しますが、佳翠苑は無いので…また次回の島根旅行の時に。
(2020年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR山陰本線 松江駅より徒歩15分
一畑電車北松江線 松江しんじ湖温泉駅より徒歩14分
松江駅より路線バス「大橋北詰」バス停下車 徒歩2分
〒690-0843 島根県松江市末次本町14 MAP