松任ふるさと館庭園“紫雲園”

Matto Furusatokan Garden, Hakusan, Ishikawa

駅前で気軽に立ち寄れる近代日本庭園。実業家・吉田茂平の大正時代の屋敷と名石揃いの庭園。国登録有形文化財。

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白山市松任ふるさと館(旧吉田茂平邸)庭園“紫雲園”について

「松任ふるさと館」(まっとうふるさとかん)は霊峰・白山の玄関口、JR松任駅の駅前にある大正時代のお屋敷。「白山市松任ふるさと館(旧吉田茂平邸)」として主屋・2棟の物置・門の計4棟が国登録有形文化財で、大正時代に作庭された日本庭園“紫雲園”があります。

2021年6月に初めて訪れました。各駅停車の旅でなんとなく通り過ぎる存在だった松任駅、駅前にこんな庭園があるとは…!そして庭園と建物内部は無料公開されています。

施主の吉田茂平という人物について。幕末、造り酒屋や油屋・質屋を営む大地主の家に生まれた茂平。明治時代の中頃には石川県内に複数店舗を持つ“吉田銀行”や現在まで続く“吉田倉庫”を自ら創業し、その影響力を広げました。

この邸宅は1912年(大正元年)に造営されたもの。こんな駅前にある近代の豪邸って珍しいのですが、自動車が一般でなかった時代なので本業の倉庫・運送業にとって駅前というのが商売にとっては重要だったんだろう。(北国街道沿いの旧市街はもう少し南)

最も古いのは主屋で、元々は明治時代に建立されこの地に移築されたもの。実はごく近年(2019~2020年)に大規模な修復工事が行われたばかり。なので所々新しさを感じるんだけど(バリアフリーにも対応!)、玄関⇒梁のある大広間⇒意匠に凝った数寄屋風書院造り…という構造は大聖寺の『蘇梁館』(旧久保彦兵衛邸)と似ていて(これも能美から移築されたもの)、当時の加賀スタイルが感じられる。

昭和の終わりに二代目吉田茂平からこの邸宅が自治体に寄贈され、一般公開を開始。“紫雲園”という庭園の名は元からあったわけではなく、市民の公募によって2001年(平成13年)に決まったもの。
庭園は主庭の池泉回遊式庭園をはじめ、主屋の西部の“側庭”、そして玄関前の“前庭”と大きく分けて3つに分類され、大正元年から約12年かけて地元の庭師(金沢の猿田氏、松任の谷氏)によって作庭されたもの。

庭園名前の由来になったのは園内(の築山の上)にある京都・保津川産の紫雲石。庭石は地元・北陸だけでなく京都の銘石“加茂の七石”鞍馬石、貴船石の巨石や最も遠くでは伊予の青石がけっこう沢山入っていて…。
そして石灯籠も同じく四国のものも含め約30基あり、吉田茂平の財力と“運送会社だからこそ”の違いを見せたいという気持ちが感じられる。(庭石・石造物については公式サイトに詳しいリストがあります。石造物リストを載せてる庭園って珍しい!)

主屋から見られる池泉だけでなく、庭園奥の築山の滝石組もかなり迫力があって――贅を尽くされた庭園というのが感じられるけど、往時は現在庭園西部に建つ『千代女の里俳句館』の範囲までが庭園だったそう(ブツっと切れる感じは確かにある)。どんな庭園が続いていたのかな~。

現在この邸宅のお向かいには『松任中川一政記念美術館』もあり、千代女の里俳句館ともども白山市の文化ゾーンとして整備が進んでいます。
そして園内には喫茶「松任23Cafe」も。電車までの待ち時間はここで過ごすのもいいかも。金沢市だけじゃない、石川県の庭園文化はやはり強い!

(2021年6月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR北陸本線 松任駅より徒歩1分

〒924-0885 石川県白山市殿町312 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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