
“水前寺成趣園”好きなら訪れて欲しい!肥後熊本藩主・細川氏の江津湖畔の別荘跡に残る、広大な池泉の美しい大名庭園。現在は結婚式場として活用中。
マリエール神水苑 日本庭園について
【平日かつイベントが無い日に見学可(事前問合せ推奨)】
「マリエール神水苑」(しんすいえん)は熊本市の水前寺・江津湖エリアにある結婚式場。かつて肥後熊本藩主・細川家の別荘(御茶屋)があった場所で、その当時に作庭された広大な池泉回遊式の日本庭園(大名庭園)が残ります。その池が熊本県の「平成の名水百選」と熊本市の「熊本水遺産」に選定。
熊本市には『水前寺成趣園』という国内随一の素晴らしい大名庭園があるうえ、肥後熊本藩主・細川家は東京にも『肥後細川庭園』を残すなど、(茶人・文化人の家系として有名ですが、)「庭園好き」なお殿様でもある。熊本市内で観光地として知名度のある庭園は水前寺成趣園くらいだけれど、市内には他にも細川家ゆかりの庭園がいくつも残ります。その中でも「広さ、綺麗さ」で言えば成趣園に次ぐと言えそうなのがこの「神水苑」。
水前寺成趣園からは1km強、水前寺江津湖のほとりの「神水」(くわみず)という地区にあり、現在はウェディング/ブライダルの場として地域の方に親しまれています。式やイベントの多い土休日は見学不可ですが、平日かつイベントがない日は希望すれば庭園散策可能。
江戸時代、この場所にあったのは細川刑部家の御茶屋(別荘)。庭園の歴史も古く、約300年前の江戸時代中期/肥後熊本藩三代目藩主・細川綱利の時代に、大名茶人・小堀遠州の流れを汲む遠州流の庭師を招いて作庭されたと伝わります。
細川家の先祖・細川三斎は千利休に師事し“利休七哲”に挙げられた大名茶人。この庭園はその時代の作風を反映した「桃山式池泉回遊庭園」と評されます。特に庭園に入園してすぐ、園内南東部のもこもこした築山の作風は前述の『水前寺成趣園』にとてもよく似ている(東海道五十三次を表現した成趣園に対し、こちらの築山は阿蘇の山並みを表現した、とも)。
その中心となる大きな池泉は江津湖から引いているかと思いきや、古くからの(そして今でも)湧水。この庭園で湧いた水が江津湖へと流れ込む水源の一つとなっているそう。園内の最東部、滝石組のある池泉がこのお庭の水源。
池泉の中心部で掛かる石橋とその傍らにある石灯籠は江戸時代から引き継がれているもので、灯籠は熊本藩の支藩・宇土藩六代目藩主・細川興文が不知火にあった茶室『蕉夢庵』から移設したとされます。
その石橋の奥へと進むと、庭園の雰囲気はそれまでの一面芝生の開放的な空間から、より自然風の植栽が感じられる空間へ。この池泉のほとりの芭蕉林は文人・高浜虚子が《縦横にみづの流れや芭蕉林》と詠んだと言われるゆかりの場所。
庭園のこのエリアが面するレストラン「ル・キャトル」もあります(見学の前後にこちらでのお食事もオススメ!)。そのほか庭園内のアカマツ、タブの木、エノキ等も推定樹齢200年〜300年とも。
2025年に7年ぶりに改めて感じたのは、国内屈指の水前寺成趣園にも引けを取らない芝生のきれいさと規模!また結婚式に付随している日本庭園の中でも、「歴史的背景とクオリティ」ではトップクラスではないでしょうか――
なお、KAB(熊本朝日放送)の門垣顧問の2010年のブログ記事によると、結婚式場としてオープンしたのは2010年頃。この結婚式場以前はホテルが営業されていたそう。そのリニューアルに際しても、ホテルと共にこの庭園も無くしてマンションにする計画もあったそうだから、歴史ある庭園でも後世に残ることの難しさを感じるし、残してくれた判断もその質の高い管理にもリスペクト!
あくまで結婚式場なので観光マップに載ることは難しくても、水前寺成趣園を知って感動した方にはぜひ訪れて欲しい!
(2018年12月、2025年7月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
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