旧伊庭家住宅

Former Iba House Garden, Omihachiman, Shiga

日本に多くのレトロな洋風建築を残したヴォーリズ設計の近代住宅。住友グループ/住友財閥を礎を築いた伊庭貞剛とその子・伊庭慎吉が愛でた庭園も。

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旧伊庭家住宅について

「旧伊庭家住宅」(きゅういばけじゅうたく)は近代の日本で数多くの西洋建築を残した建築家:ウィリアム・メレル・ヴォーリズ設計の洋風住宅。住友グループ/住友財閥の二代目総理事をつとめた伊庭貞剛とその子・伊庭慎吉の邸宅として利用され、現在では近江八幡市指定文化財として一般公開されています。
2023年3月に約6年ぶりに訪れたので、その写真を中心に紹介。

現在の住友グループの歴史を築いた伊庭貞剛。そのキャリアについては滋賀・大津の『住友活機園』の中で説明したので割愛(合わせて読んでみて)。
そんな伊庭貞剛を発注者として、四男・伊庭慎吉の邸宅として1913年(大正2年)に建築されたのがこの邸宅。伊庭慎吉は実業家としてではなく、画家、安土村長、そして近隣の『沙沙貴神社』(全国の「佐々木」さんの氏神さま)の宮司/神職を務めるなど多方面で活躍されました。

戦後は伊庭家の手を離れ、1978年(昭和54年)に安土町の所有に。しかし当初は保存のためではなく町立保育園のための敷地としての取得で、伊庭邸は老朽化のため取り壊しの予定だったそう。
しかしヴォーリズ建築の文化的価値の高まりや篤志家による保存費用の寄付もあり、安土町指定文化財の第一号となり郷土館としての保存・活用がスタート。現在も地域のボランティア団体「オレガノ」さんにより公開が行われています。

『豊郷小学校旧校舎群』など滋賀県に特に多くの作品を残したヴォーリズ。外観(特に2階部)はハーフティンバー様式の洋風建築で、内装は洋室と和室が入り混じった(洋室の中にも和風の衣裳を取り入れた)“近代和風建築”。ちなみに当初は全体が洋風で、1階の多くを和風に改装したのは昭和初期。サンルームや主座敷の広縁が加わったのはその時。

そして庭園について。隣接する町立保育園の建設に伴って最盛期からは大幅に縮小されているものの、芝生の広場を主体として、サンルームの前には正円状の洋風の池が、そして広縁の前には建築の数寄屋風に合わせた和の庭をもうけた和洋折衷の庭園になっています。

伊庭貞剛は自らの邸宅(住友活機園)の庭園に近代京都の有名庭師・七代目小川治兵衛を招くなど庭園への造詣やモチベーション、繋がりもあった人物。広縁の前の「石を組み合わせた沓脱石」や石敷のデザインは近代の京都の職人のデザインに寄っている(近隣の近江五個荘が拠点の“鈍穴流”ではない)。ヴォーリズ建築のみならず、和のお庭の意匠にも注目してみて。

(2016年12月、2023年3月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR琵琶湖線/東海道本線 安土駅より徒歩6分

〒521-1343 滋賀県近江八幡市安土町小中191 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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