京都・西陣の“千両ヶ辻”に明治時代に建築、国登録有形文化財/京都市景観重要建造物の商家・京町家で見られる6つの坪庭。
西陣くらしの美術館 冨田屋について
【要事前予約】
「冨田屋」(とんだや)は京都・西陣の老舗呉服商。明治時代以降に建てられた京町家・商家建築が国登録有形文化財/京都市景観重要建造物/京都市民の選ぶ“京都を彩る建物や庭園”などに指定・選定。『西陣くらしの美術館 冨田屋』として事前予約制で公開されれいます。
西陣織の街として栄えた京都・西陣エリア。そのおおよそ南東部、今出川通りから大宮通り(大宮今出川〜大宮中立売)は織物問屋街として特に栄え、江戸時代以降“千両ヶ辻”と呼ばれました。(1日に千両もの経済が動いたということに由来)
その千両ヶ辻で例年秋分の日(9月23日)に行われているのが『西陣・伝統文化祭「千両ヶ辻」』。…と言いつつ今年まで知らなかったのですが、この日に限り公開される京町家もあるということで…2022年の「千両ヶ辻」へ!
その千両ヶ辻で最も大きな商家の一つが「冨田屋」。通常は事前予約制での公開ですが、この9月23日は予約無しでも見学可能でした。
江戸時代中期、当初は京都・伏見で両替商として創業した冨田屋。豪商としての地位を築きますが、幕末〜明治維新期の「鳥羽伏見の戦い」の戦災で全焼…そのことを機に西陣に転居し織物問屋を営みはじめました。
10代当主・田中藤兵衛が現在の商家を建てたのが1885年(明治18年)。間口の広い商家+大きな表蔵が相まって“豪商”に相応しいたたずまい。主屋/表蔵/中蔵/宝蔵/離れの5棟が国登録有形文化財。
「西陣くらしの美術館」としては、ただ京町家の建築をぐるっと見学するだけではなく、しつらえや書画、京都・西陣の文化/風習になどについても解説を受けながらの見学。
例えばスルーしそうな小堀遠州の筆によるお軸や橋本関雪、裏千家・千宗匠の絵画なども解説を受けながらだから気づけたり…。
この富田屋には6つもの坪庭があります。そのうち、主庭と言えそうなのが主屋の座敷と廊下に挟まれた庭園で、京都の銘石と苔むした姿が美しい。この日は現代アート風のライトアップ用の照明が架けられていたのだけれど、町家の庭のこういう雰囲気もすごく良い!
廊下の先の「離れ」は1935年(昭和10年)の増築。2つの茶席+能舞台も兼ねた“能座敷”を備え、数寄屋風と近代の洋風の家具が入り混じった近代和風建築空間。離れ座敷〜茶室の前の坪庭がもう一つの主庭で、その中に植わったマツを背景に能を鑑賞していたとか。
建築の中にある茶室“楽寿”は武者小路千家の九代目家元・千宗守さんの監修・命名によるもの。この茶室も良いけど、立礼席のデザインがまた面白くて…床の間はあるけど全体的には洋室。だけど天井は網代編みで床は桐の木の節がそのまま活かされていて…当主と大工の想いが反映された粋な空間!
文化体験には着付・お茶席・書道・華道・香道・町家ライトアップディナーなどのオプションや特別プランも。京都をより深く体験したい方はぜひ。
(2022年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
京都市営地下鉄烏丸線 今出川駅より徒歩15分
最寄りバス停は「今出川大宮」バス停 下車徒歩3分/「一条戻橋・晴明神社前」バス停下車 徒歩5分
〒602-8226 京都府京都市上京区石薬師町697 MAP