丸亀駅すぐ近くに残る、丸亀藩主・京極家の御用商の明治時代の屋敷。茶室“松濤庵”と自然風庭園“山里の庭”。
京極庵について
「京極庵」(きょうごくあん)はJR丸亀駅から徒歩3分と近い場所に残る、丸亀藩主・京極家お付きの商家:前谷家が明治時代に建立したお屋敷。庭園や茶室“松濤庵”のほか、京極家伝来の品や前谷家と縁あった近代の画家の作品も鑑賞できます。
2021年年始に初めて訪れました。丸亀に訪れるのは何度か目だけど、駅前にこんな場所があるなんて知らなかった…!
もっとも、公開がはじまったのはごく最近(2015年)。取り壊しの話があった所を丸亀市内の不動産会社「京都ハウジング」の鈴木武子社長が購入。会社名の通り京都をこよなく愛する社長だそうで、“地域と日本文化の継承”を目的として公開、裏千家の茶道教室なども開かれています。
丸亀藩御用商・前谷家の歴史は長く、京極家が松江藩⇒播磨・龍野藩⇒丸亀藩と移ったのに従い讃岐国へ。近代には地域の銀行の要職や地場産業の会社の重役、市議会議員や県議会議員をつとめた旧家でした。
屋敷が建立されたのは1886年(明治19年)。そして茶室“松濤庵”は1934年(昭和9年)に当時の当主・前谷寅次郎により建てられたもの。
晩年に前谷家の先祖が過ごした街・松江を訪れた寅次郎。そこで松平不昧公ゆかりの茶室『菅田庵』を見学。その道中、米子市東光園で雨に打たれた時に中世の詩人・張佳胤の詩を思い浮かべ、そこから“松濤庵”と名付けられました。(そのエピソードからは『皆生温泉 東光園』は彫刻家・流政之が振り返っていた通り、由緒ある旅館だったんだなあと)
屋敷と茶室に囲まれた中庭が、千利休七則の一節から名付けられた“山里の庭”。モミジを主木として、シダやススキといったその名を反映した自然風の植栽が特徴的(1月なのにツワブキの黄色い花が元気に咲いていたのに驚き!)。そんな中庭を眺めながら、数寄屋風の離れでお抹茶をいただけます。
主屋ではそのほかにも京極家ゆかりの品々や前谷家が収集した茶道具・美術品を鑑賞することができます。東山魁夷に平井楳山、そして『中津万象園』への居住歴もある山下紅畝の絵画など。また“乃木将軍”乃木希典に関する史料展示も。香川・善通寺の師団長だった頃に前谷家と縁があったとかそんな感じだった(ちょっと記憶が曖昧)。
これまで丸亀に対して(丸亀城や中津万象園を除くと)“昭和・戦後のレトロ感”というイメージはあったけど、こういう近代和風建築があるとはあるとは知らなかったな…。
ゆったら“平成・令和の町”へと変貌しようとしている中ではちょっと街で浮いている存在(だから文化財ではないんですよね)。それでも丸亀城や中津万象園のような歴史スポットがお目当ての人ならば絶対好きなはずの場所だし、MIMOCA目的のアートファンも絶対好きだと思う。あとアウェー・讃岐行く方も、ぜひ立ち寄って!
(2021年1月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)