小山市立車屋美術館・小川家住宅

Kurumaya Museum / Ogawa Residence Garden, Oyama, Tochigi

近代栃木の豪商・小川善平の邸宅として建立された和洋折衷の近代和風建築と日本庭園。国登録有形文化財。

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小山市立車屋美術館・小川家住宅について

「小山市立車屋美術館」(おやましりつくるまやびじゅつかん)は江戸時代~近代に下野で栄えた豪商・小川家の屋号“車屋”を冠し、2009年に開館した美術館。美術展や資料展示のほか国登録有形文化財『小川家住宅』と庭園を見学することができます(内部は撮影禁止)。

『鷹見泉石記念館』で立ち寄った古河から少し北上。JR間々田駅から程近くに明治時代~昭和初期に造営された近代和風建築があります。小山駅では下車したことあったけど、間々田駅で降りるのは初めて!

JR宇都宮線や“五街道”日光街道から見て西部を南北に流れる“思川”。江戸時代~明治時代にかけては舟運での物資輸送において重要な役割を果たしていました。
その港の一つ“乙女河岸”は徳川家康も下野国から江戸へ引き替えす際に利用したとされ、その由緒から『日光東照宮』造営の際には幕府の御用河岸として繁栄。明治時代には蒸気船が就航し東京・深川までを結びました。

そんな乙女河岸で江戸時代後期に肥料問屋“車屋”を創業したのが小川家。明治中期に大宮~宇都宮間の鉄道が開通すると鉄道の時代の到来にあわせて、当時の当主・小川善平によって駅近&日光御成道沿いの現在地に移転。その名を“小川商店”と改め、更なる発展を遂げました。

敷地内に残る建物のうち、主屋・表門・米蔵・肥料蔵・土蔵の5棟が国登録有形文化財。このうち土蔵のみ棟札から乙女河岸の旧邸宅より移築されたものと推定されていて、それ以外は明治末期~大正時代の初期にかけて新たに建築。(ちなみに、“旧”とつかない通り現在も小川家の所有であり、敷地内には見た目新しい建物もある。)

洋風の装飾が見られる御影石の表門からはじまり、主屋の2階にも洋室が設けられている和洋折衷な近代和風住宅。もちろん“洋”の要素だけでなく、1階座敷では近代の豪商の邸宅らしく数寄屋風造りの意匠が所々見られる。主屋の棟梁をつとめたのは平澤代四郎

純和風な外観の主屋を囲う形で庭園が残ります。前庭は美術館開館時に整備されたものみたいだけど、主屋北~南東部へと繋がる主庭は建築の同時期の作庭だとすると明治~大正時代の庭園。
サツキ・ツツジの刈込の中に飛び石が配された平庭で、奥に枯池と巨石・石灯籠による築山(中島?)の姿。枯池の中の佐渡の赤玉石がとても印象的!

栃木県南部の近代日本庭園…はあんまり類似の例がないけど、栃木市の重伝建地区にある『横山郷土館』の庭園は近しいかもしれない(これも次回紹介します)。足利市の庭園とはまたちょっと違う感じ。

その他、米蔵は年5回程度の企画展が開催される美術展示室や市民ギャラリーとして、肥料蔵では小川家関係の史料が見られる資料展示室として活用されています。5室ある長い米蔵の漆喰の壁が外から見ても大迫力!18きっぷ旅の途中下車にもぜひ。

(2021年6月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR宇都宮線 間々田駅西口より徒歩6分

〒329-0214 栃木県小山市乙女3丁目10-34 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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