京都の国宝『浄瑠璃寺』と並び珍しい“九体阿弥陀如来”が東京で拝める寺院。多数の東京都指定文化財のほか、昭和/平成に作庭された現代の日本庭園も。
九品仏 浄真寺庭園について
「九品仏 浄真寺」(くほんんぶつ じょうしんじ)は東京・世田谷区の自由が丘の住宅街の西に位置する寺院。京都の国宝『浄瑠璃寺』と並んで珍しい「九体の阿弥陀仏」を安置し、現在でも約12万平方メートル(3万6千坪)の広さをほこる東京の大寺院の一つで「九品仏」の名で地元に親しまれています。名前の由来の仏像などが東京都指定文化財、建造物が世田谷区指定文化財。
その歴史について。江戸時代初期の1678年(延宝6年)、江戸幕府から寺領を賜った高僧・珂碩上人により創建。正式名称は浄土宗の「九品山 唯在念佛院 淨眞寺」。なお戦国時代のこの場所には吉良氏が築いた『奥沢城』があり、境内には現在もその当時の土類が残り『奥沢城跡』として世田谷区指定史跡になっています。
開山の珂碩上人が作ったのが九体の阿弥陀さま。「木造阿弥陀如来坐像」として東京都指定有形文化財、この他にも九体の阿弥陀様を安置する「浄真寺三仏堂(上・中・下品堂)」や仁王門が世田谷区指定文化財、「木造釈迦如来坐像」「木造珂碩上人坐像」「絹本著色珂碩上人像」が東京都指定有形文化財、「浄真寺のイチョウ」、樹齢700年ともいう「浄真寺のカヤ」が東京都指定天然記念物、「浄真寺の二十五菩薩練供養」が東京都指定無形民俗文化財…と世田谷の文化財の集積地。
江戸時代後期の「江戸名所図絵」に描かれた当時からほぼ変わらない「七堂伽藍」を残す浄真寺。三仏堂、本堂、開山堂もかつて茅葺だった屋根が現在は銅板葺になっていたりと時代に合わせて新しくなっている所もありますが、ベースは江戸時代初期の建築。東京の中では貴重な存在。
そして本堂「龍護殿」の周囲にいくつかの庭園があります。
●本堂から見下ろす枯山水庭園
●その逆側にある池泉鑑賞式庭園
●奥沢城の時代からの言われのある池泉庭園『鷺草園』
主庭の枯山水庭園は平成元年の航空写真に映り込んでおらず、それ以降の作庭。その逆側の池泉庭園はあるようにも見える…?
「鷺草園」も現在の姿は「庭園として整備された姿」ですが、奥沢城主・大平出羽守の娘・常盤姫と世田谷城主・吉良頼康の恋物語(詳しくは寺院公式サイトで!)を言われとする“さぎ草”が夏場に咲きほこる庭園。さぎ草は世田谷区の花でもあります。
また庭園の他にも境内には多くの高木・古木があり「江戸時代以前の武蔵野の自然」の面影を感じられます。人気の街で自然が感じられる場所、ぜひ参拝に訪れてみて。
(2022年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)