廣誠院

Kosein Temple Garden, Kyoto

京都の通常非公開の寺院を舞台とした『イザベラ・デュクロ展』(2025年)。明治時代の実業家・伊集院兼常こだわりの数寄屋建築と文化財庭園と共にアート鑑賞を。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

廣誠院庭園について

【通常非公開】
「廣誠院」(こうせいいん)は京都市中京区の高瀬川二条に位置する臨済宗の単立寺院。その建築は南禅寺界隈別荘『對龍山荘』の施主としても知られる近代の実業家・伊集院兼常が明治時代に建立した旧邸。その近代和風建築は京都市指定有形文化財/庭園が京都市指定名勝となっています。

通常非公開で、また特別公開の際もWEBへの掲載は不可である事も多い廣誠院。2022年11月に行われたSfera主催、Sfera x WEEKENDERS COFFEE『コーヒーセレモニー at 廣誠院』および、2025年11〜12月に開催されたArt Curation Kyoto関連展示『イザベラ・デュクロ「響き合わぬ」展』の様子は撮影と紹介が可能でしたので、その展示と秋の庭園の様子を紹介させていただきます。

かつて元勲・山縣有朋が別荘“第二無鄰菴”を構えた『がんこ高瀬川二条苑』の斜め向かい、高瀬川の始点に残る史跡「一之船入」界隈の路地裏にたたずむ「廣誠院」。冒頭の通り、そのルーツは旧薩摩藩士で明治時代には実業家として活躍した伊集院兼常が1892年(明治25年)に建立した邸宅。時期で言うと『對龍山荘』の前に構えられた旧邸で、その後は高瀬川二条苑から東山の『無鄰菴』へ移った山縣有朋の後を追うように伊集院兼常も南禅寺界隈へと移りました。

皇族/宮家の御殿やかの『鹿鳴館』の造営にも携わるなど、建設系の事業で活躍した伊集院兼常。そんな伊集院がこだわり抜いた空間…造営当初から存在する池泉庭園と書院/広間/庭園にせりだす茶室はまさに“庭屋一如”。(そしてこの数寄屋空間とアートの展示、『コーヒーセレモニー』の時のしつらえもとても素晴らしかった!)

伊集院の後は滋賀出身の実業家/貴族院議員・下郷傳平の所有を経て、住友財閥初代総理事・広瀬宰平の長男・廣瀬満正の所有に。
自らも実業家や貴族院議員として活躍した廣瀬満正。その没後に満正の遺志を継いだご夫人・歌子が「財団法人廣誠会」を設立。昭和年代に臨済宗の単立寺院となり現在へと至ります。

なお広瀬家の所有となった後に邸宅は一部改修されていて(仏堂など)、そこには愛媛・新居浜の国指定重要文化財『旧広瀬邸』や滋賀の伊庭貞剛旧邸『住友活機園』も手掛けた住友財閥ゆかりの数寄屋建築家・八木甚兵衛が関わっているとか。なお茶室の入り口にかけられた松平不昧筆の“環翠”の額は下郷傳平によってこの地に残されたもので、近代の実業英からの松平不昧へのリスペクトを改めて感じる…。

庭園は建築の南側に位置します。書院の大きなひさし越しに眺める池泉庭園で、庇に誘導される目線の先には緑色片岩(青石)で組まれた滝石組が。イベント時は建築内からの鑑賞のみですが、隣を流れる高瀬川から水を引き入れている池泉回遊式庭園で、高い位置から見下ろす建築や水流すれすれの大きな石橋など、『高瀬川二条苑』との関連性も感じます。

伊集院兼常は、近代京都を代表する庭師・七代目小川治兵衛(植治)の庭造りに施主という立場から影響を与えた一人でもある…と言われ、この庭園に植治が関わった確証はないものの、後に植治の庭園に見られる類似性も一部(手水鉢に)あるとか(※なお高瀬川二条苑は植治)。植治の作庭ではなくとも、玄関のカラフルな延段(石畳)、京都の銘石“真黒石”の沓脱石など“近代に京都で流行した庭石”がふんだんに用いられているのも一つの見どころ。

…その一方で、現在の庭園で最も目が引く“青石”は近代京都の庭園ではほとんど見かけることがない石材(昭和の作庭家・重森三玲の代名詞となったのはこの邸宅の50-60年後の話)。そう思うと、なぜこのお庭に青石が象徴的に用いられているのかな…?考えられるのは、広瀬満正が生まれ故郷・愛媛県で産出される“伊予の青石”を庭園の中心に据えた——のではと言うこと(広瀬宰平は滋賀生まれですが、満正は新居浜生まれ。愛媛県内でも事業を展開し多額納税者にも名を連ねました)。別子銅山?石鎚山?…いや、2つの青石が寄り添う姿は満正・歌子夫人を表しているのだろうか…そんな人の想いも垣間見えてきます。

護岸石の間から姿を現しているもみじもまさに“無作為の作為”。2023年には廣誠院の境内に『宿坊KANETSUNE』『食堂ICHIFUNE』がオープン。宿坊は1年間で100組限定で、なんと建築家・伊東豊雄さんの監修…!詳しくは公式サイトをご覧ください。

⇨京都市中京区|非公開寺院にある雅なプライベート空間 – 宿坊 KANETSUNE

(2022年11月、2025年7月・11月・12月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

京都市営地下鉄東西線 京都市役所前駅より徒歩3分
京阪本線 三条駅より徒歩5分
最寄りバス停は「京都市役所前」バス停 徒歩3分

〒604-0924 京都府京都市中京区河原町通二条下ル東入ル一之船入町538 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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