新潟を代表する豪農“千町歩地主”斉藤家と村民によって作庭された広大な池泉回遊式庭園と近代和風建築。
孝順寺庭園(旧斉藤家本邸)について
【拝観は要事前予約/冬季休館】
「孝順寺」(こうじゅんじ)はかつて新潟を代表する大地主だった斉藤家の本邸の建築を本堂として利用している寺院。昭和初期に約10年かけて造られた贅を尽くした近代和風建築と、同時期に作庭された広大な池泉回遊式庭園が見られます。2019年のGWに初めて訪れました!
このGW、新潟県に訪れて庭園巡りをすることは決めていたけど――予定してた日に市内の宿が抑えられず、なんとか取れた手頃な宿が安田の町だった。新潟県の安田と言ってもピンと来ない人も多いですよね…ヤスダヨーグルトのお膝元であり、江戸時代には安田藩の城下町。安田藩は短命だったものの、現在でも古い街の面影が残っています。
どの駅からも離れている、公共交通機関では行きづらい場所なんだけど――そういえば『にいがた庭園街道』で紹介されていた庭園があったなあ…と思って拝観を予約し。行程も会津若松から新潟へ向かう高速バスは安田ICにバス停に停車することは把握していたのでこれは好都合――と色々重なって。
そんな風に行程の都合がハマったから観に行った庭園という感じではあるのですが、これは本当に行ってよかった…!寺院としては鎌倉時代に創建された寺院であり、浄土真宗の祖・親鸞が訪れてそれにまつわる伝説、越後七不思議のひとつ「保田の三度栗」が残るとか。
そして「斉藤家」は新潟市内にある国名勝庭園『旧齋藤家別邸』のサイトウさんとは別のサイトウさんということなのですが、実はこちらの方がスゴイ一家。山形県酒田市の『本間氏庭園』、宮城県石巻市の『斎藤家庭園』、秋田県大仙市の『池田氏庭園』で知られる東北三大地主や新潟の『北方文化博物館』でおなじみの豪農・伊藤家など、こうした1000ヘクタール以上の小作地を所有した大地主を“千町歩地主”と呼んだらしいのですが(今回の新潟の庭園巡りで初めて知りました。勉強になる…!)、この斉藤家もその一つ。
今で言う全国高額納税者ランキングでも上位の家の豪邸――庭園の写真が多くなっちゃったので建物内部の写真は削っちゃったんだけど、まさに近代の豪邸。欄間や天井を見ていてもあらゆる意匠が取り入れられていて、まさに贅を尽くした建築…。その池泉回遊式庭園も広大であり、主屋からは五頭連峰の借景が美しい。池の中央にある灯籠らしきものは作庭当初に配された噴水。現在は利用されていないそう。
お金持ちによるお金持ちの為の豪邸と庭園――と思ってしまいそうなところだけど、ここにも大事なストーリーがある。この邸宅・庭園が造られた経緯には大正〜昭和の不景気があったそう。村人へ仕事を供給するために斉藤家はこの邸宅と庭園を造営するに至り、都会から有名棟梁や有名庭師を呼ぶわけではなく全て地元の人たちによってこの邸園は手掛けられたそうです。その作庭の中心にいたのが、新発田藩の御庭方・金藤紅葉郎。
半ば公共事業。でも、そういう背景がある庭園ってここだけではなく山形県天童市の『御苦楽園』もそうだったし、他にも沢山あるんだと思う。公共事業によって作庭された庭園だからって侮っては良くないな、という教訓。
昭和の中頃に斉藤家から孝順寺に譲渡されて現在に至ります。初めて写真を見た時、この地域の寺院の庭園としては池デカ過ぎじゃない…?という違和感があったのですが、そういった背景だったのかと納得。特段なにかの文化財になっている様子は無いけど(そんな時のための国交省のガーデン・ツーリズム制度なのかも…)、新潟の豪農の庭園を巡る際にはこちらもチェック!
(2019年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR磐越西線 五泉駅より約8km(※駅にレンタサイクルあり。冬季休業)
JR羽越本線 水原駅より路線バス「保田横町」バス停下車 徒歩3分(水原駅までも新潟市内からは路線バスが便利…?)
新潟駅⇒村松駅・会津若松駅行の高速バス「安田IC前」バス停下車 徒歩25分(自分が利用したのはこれでした)
〒959-2221 新潟県阿賀野市保田4626-1 MAP