311からの復興をめざす宮古市・鍬ヶ崎地区に2019年に開かれた、石組に思わず足を止めてしまった公園。
切通し公園について
「切通し公園」(きりどおしこうえん)は宮古市の鍬ヶ崎地区に2019年1月にオープンした公園。宮古駅から浄土ヶ浜へ向かう途中にあります。
一見ただの公園(広場)なので大した場所じゃないと言えばないし知名度も無い、あまり読まれないかもしれないけれど、そういう時こそ「ここを取り上げたい」と思った背景を書きたいと思います。
江戸時代以降、船舶による江戸との交易で栄えた宮古。漁港からも近い宮古の鍬ヶ崎地区は花街が発展し、遊郭も建つなど栄えた地区でした。勿論それだけではなく多くの家屋も立ち並ぶ一帯だったそうですが――
2011年3月11日、東日本大震災の津波により街は失われました。
自分はこの街の“その後”の姿しか知らない。2019年、数年ぶりに宮古を訪れこれまでと同じように自転車で『浄土ヶ浜』を目指していたら、ちょうどこの公園を見つけた。公園入口には津波到達地の碑もある。
そして街が失われた場所に作庭された、枯山水庭園的な石組と景石の風景。宮古市からこの地区の区画整備を受注しているUR都市機構のサイトには
公園のデザインには道路整備の際に発生した石を利用しています。
とだけあるけど、何を表現しようとしたのか――設計者の方に意図や思いを聞いてみたいランドスケープデザイン…。意味が無いわけないと思うの。いや深読みし過ぎかもしれないけど――。(そして“エモい”背景がある時に、それをどの程度思いを込めて創作を行うかはとても難しいとも思う)
URと連名で名前のあったむつみ造園土木株式会社さんは秋田県の造園会社。初めて知ったけど、秋田本社以外にも岩手や仙台、関東(茨城)にもオフィスがあり、また秋田県内では県立小泉潟公園(行ってみたいと思ってた場所!)をはじめとして複数の都市公園・施設の指定管理者でもある、東北では大手?の造園会社さんでした。自分が行ったことがある中では『国営みちのく杜の湖畔公園』の一部エリアも手掛けられているみたい。Facebook見ていても指定管理における情報発信を積極的にされています。
ちなみになぜこの公園が“切通し公園”かと言うと、現在宮古の市街地から漁港を結ぶ県道259号線の通りは明治時代に埋め立てられ、また山の切通しを開削して通じた道だったため。それまでは現在の愛宕町と鍬ヶ崎地区は遮っている山を越える必要があり、物流には大変不便だったそう。
この山の上にいくつかの寺社があるのはおそらくその頃からの名残であり――ただ、数百年に一度の災害を知った後となっては、高台に寺社仏閣があることは歴史的に必然性を物語っている、のかもしれない。ちなみに公園の背後に見えるコンクリートの遺構は昭和初期に建てられた“ラサ工業”の産業遺構。
また同じくURのサイトによると、この公園の植栽はこの冬に地元・宮古の小学生によって植樹されたもの。震災を2、3歳の頃に体験した子供たちが、公園に新たな生命を吹き込んだ――そしてその子供たちが大人になり年を重ねた先に、この公園の“完成”があるのだろうな。願わくばこの公園が長い間、街の記憶として生き続けますように。自分も今後また宮古を訪れた時、この公園がどのような姿に変わっていくか見届けたい。
(2019年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR山田線・三陸鉄道 宮古駅より徒歩30分(駅前観光案内所にレンタサイクルあり)
宮古駅より浄土ヶ浜行の路線バス「漁協ビル」バス停下車すぐ
〒027-0006 岩手県宮古市鍬ヶ崎上町2 MAP