片桐寅吉(旧片桐家住宅)庭園

Katagiri Torakichi-tei Garden, Niigata

2020年開店の新潟の最新人気店は庭園ファンにもマストなお店。近代新潟の有力庭師・後藤石水作庭。国登録有形文化財。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

魚や片桐寅吉/港茶屋(旧片桐家住宅)庭園について

【食事は予約推奨】
「魚や片桐寅吉/港茶屋」(かたぎりとらきち/みなとぢゃや)は明治時代に建築された国登録有形文化財「旧片桐家住宅」を活用した食事処兼カフェ。近代〜現代に新潟で活躍した庭師・後藤石水による作庭の庭園も残ります。

幕末~明治時代に“開港五港”の一つとなり繁栄した港町・新潟。その玄関口となった国指定重要文化財『旧新潟税関庁舎』や『みなとぴあ』、そして古町からも程近くにある元豪商の邸宅『旧小澤家住宅』——の並びにあるのが「魚や片桐寅吉/港茶屋」。

前は何度も通り掛かってるのに全く知らなかった…それもそのはず、開店したのは2020年9月。これまで新潟を訪れた時にはまだオープンしておらず、1902年(明治35年)建築の主屋・土蔵が国登文となったのも2020年。ほやほや。

江戸時代から漁業を営む網元として名を馳せた片桐家。明治18年に創業した「片桐鮮魚問屋」はその後「新潟鮮魚問屋」「新潟中央水産市場株式会社」と名前を変えながら今現在も新潟の漁業を支えています。そんな片桐家の当主・寅吉が自邸として建築したのがこの邸宅。

会社名を変える中でやがて「新潟中央水産市場」の所有となり、他の施設(万代島鮮魚センターのある「ピアBandai」など)での鮮魚店の運営ノウハウをもって新たに開店したのがこちらの店舗。
『取り壊されそうな所をホワイトナイトになった』とか『自治体の所有で指定運営者になった』とかではなく、当代の社長が「どう有効活用するか」を若い頃から構想されていたという、また異なる一つのモデルケース。

そんな水産会社の直営店なので、多少値が張る海鮮丼もそれに見合うクオリティ!食のこだわりが薄い自分でも鮮度が違うのがわかる。
そして「このご時世だし駅から遠いし、普通に入れるだろ」って気持ちで訪れたら、(休日ではあったけど)満席!夜は完全予約制、お昼も「予約優先、空きがあったら入れる」というシステムなのだけど、これから行く方はお昼も予約推奨です。dancyuとかにも載ったのねー…。

お食事処となっている主屋座敷の奥には苔もきれいな日本庭園が。作庭者である後藤石水は先に紹介した『北方文化博物館 新潟分館庭園』や県外でも群馬県高崎市の隠れた名庭園『徳明園』を手掛けている、近代新潟で活躍した作庭家のひとり。新潟分館の再訪まで名前を挙げたことがなかったんだけど、実はこれまで&今回で数箇所の庭園を見ていた…。

枯山水と池泉回遊式とタイプは異なるけどすぐそばの『旧小澤家』と同じく庭石に気合が入っている庭園。池手前の佐渡の赤玉石のような地元の銘石もあれば、瀬戸内海から船で運ばれたという青石も。大きな池泉ではないけど、池中の石も奇石を好んで使ってるな〜って感じがするし、極め付けが庭園奥の細長の山灯籠。
この近さで言ったら、きっと小澤家と片桐家の当主同士で銘石を見せあったりしていたんじゃないか——そしてそこには後藤石水も居たのではないか(小澤家の庭園にも後藤が関わっていたりしないのかな)。

屋内には新潟の古写真の数々や福沢諭吉の書も(訪れたのか、美術品として購入されたのか…?)。庭園ファンとしても今後の新潟旅行では毎回立ち寄りたいマストなお店!

(2021年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR上越新幹線 新潟駅より約2.5km(徒歩30分・駅前にレンタサイクルあり)
新潟駅より路線バス「東堀通十二番町」「湊町通二の町」バス停下車 徒歩3分/「本町」バス停下車 徒歩10分

〒951-8068 新潟県新潟市中央区上大川前通12番町2742 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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