京都・九条山の大正時代の近代和風邸宅に、植治・植熊と並び称された庭師・本位政五郎が作庭した庭園。(非公開)
閒居 吉田やについて
【宿泊者向け/レストランは紹介制】
「閒居 吉田や」(かんきょ よしだや)は京都の洛東・九条山の丘の上に大正時代に造営された屋敷を用いた料理店/宿泊施設。
2018年秋に惜しまれつつ閉店した京都・御所南の人気店“吉田屋料理店”。そのオーナーシェフ・吉田裕子さんが2019年に新たに開かれたのが「閒居 吉田や」。
九条山…と言えばデヴィッド・ボウイが来日のたびに訪れていた邸宅“桃源洞”があった、市街地からは少し離れた閑静な邸宅街。
閒居も1926年(大正15年)に京都帝大の教授宅としてのルーツを持ち、高台にある庭からは京都大学の時計台を見通すことができたそう。玄関の漢文“寂静適居幽”から施主のこの地への想いが感じられる。
…で、自分が知ったきっかけはやはり庭園。閒居の庭園の作庭を手掛けた京都の植木屋・本位政五郎。この本位政五郎について調べる中で閒居を知り、行きたいなと思い…。
更にそのきっかけは、昭和の京都の有力作庭家・小島佐一のお孫さんがSNS経由で氏のインタビューを送ってくださった所から。氏は『京せんずい』1974年春号の中のインタビューで以下のような話をされていた。
《(若い頃の自分は)りっぱな職人のつくった庭をみることに一生懸命だった》
《一流の庭を見て、目を鍛えた》
《その頃の京都の庭は三つの流れがあった》
《一つ目は小川治兵衛(植治)の御殿風のもの、二つ目は加藤熊吉(植熊)の茶庭風、三つ目は本位政五郎の文人好みの庭》
植治と植熊はわかるけど…本位政五郎は見慣れない名前…!
早速調べると、これまで足を運んだ中では大阪・岸和田市の市指定文化財庭園『五風荘庭園』は本位の作庭。あとずっと行きたいと思ってまだ行けていない滋賀の『蘆花浅水荘』がそう。これだけ(全国的に見れば比較的)情報の多い京都の庭園でも、まだ隠れた名作庭家が居るのか…。
(ちなみにこのインタビューの中では、佐一が修行していた昭和初期に『松尾大社』の庭園作庭に植治が入ったことも語られてる。重森三玲の前には植治の庭園があったのか…)
ということで、若葉萌ゆる春を待って初めて伺いました。レストランを紹介しただくツテはないなあ…と思ったので、元は応接間だった洋室に宿泊。昨年来、京町家には時折宿泊に訪れてましたが近代の洋室は初めて!京都の近代建築に泊まる貴重な体験。
もう一室は庭園に面した書院造りのお座敷で、そしてパブリックスペースの“和”だけじゃないセンスあふれるしつらえも本当に素敵。
庭園について。数寄屋風建築の礎石も庭園の石組の一部。現在は水は流れていませんが、高低差ある傾斜地を活かした“流れ”のある池泉回遊式庭園で、山の中腹らしい四季折々の花が楽しめる植栽や亀の上半身のような護岸石や変わったデザインの春日灯籠など。なるほどこれは“文人好み”。
しかし現段階では京都で本位政五郎が残したと分かっているのはここだけ。作庭者が語られていない京都の近代の庭園って色々あるけど、その中の幾つかは本位政五郎の作もあるんだろうな~。今回この庭園を見て『奥丹清水』の庭園とかがそうなんじゃないかなと…。ちゃんと今後調べていきたい作庭家。
本位政五郎メインの紹介になっちゃったけど、友達に京都のオススメを聞かれたらここを教えたいと思っているとっておきの場所。
(2021年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)