菅田庵

Kandenan Garden, Matsue, Shimane

後の京都の名作庭家にも影響を与えた?大名茶人・松平不昧公自らが設計・作庭した茶室と庭園。国指定名勝。

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菅田庵について

「菅田庵」(かんでんあん)は江戸時代中期に大名茶人・松平不昧公こと松江藩七代目藩主・松平治郷が松江藩家老・有澤家の山荘に自らの設計・指示によって造営した茶室と庭園。菅田庵及び向月亭が、また庭園を含めたその一帯が国指定名勝およびとなっています。

長らく修復により公開されていませんでしたが、2019年に修復が終わり、2020年11月より一般公開開始。9年ぶりに訪れた松江の一番の目的はここ。ずっと見たかった…!なお建物内部の撮影は不可なので建物外観と庭園の写真を中心に紹介。

松江藩家老・有澤家について。江戸時代初期の寛永年間、松江藩初代藩主となった松平直政に仕えた有澤織部直玄が初代で、有澤家が現在菅田庵のある山一帯を与えられたのは松平直政の時代。

有澤家五代目・有澤弌通は松平不昧公の幼少期に茶道の指南役となり、その子?有澤弌善は松江藩の家臣としてだけでなく不昧に茶道を学ぶ立場に。
この菅田庵や現在は別の場所に残る島根県指定文化財の茶室『明々庵』(元は有澤家の本邸に建立→この菅田庵に移築された時代も)は松平不昧が有澤弌善のために建立したものとされます…不昧からの寵愛ぶりが感じられる。

有澤家の別荘「菅田村山荘」に現在残る菅田庵・向月亭・御風呂屋が建築されたのは1792年(寛政4年)(*1790年という説も)。特筆すべき点は冒頭に書いた通り松平不昧公が自ら設計・作庭に携わった茶室/庭園であるということと、その“お殿様の建造物と庭園”を、200年以上経った現在も有澤家が所有し、当初の建築・庭園を改変せず保存し続けてきているということ。寵愛された家老が200年守り続けてるってなんかすごいストーリー。

入り口から続く苔の園路——“踏んだら弱る”と言われる苔を園路に用いる独特のデザイン(これも近年追加で国の名勝範囲になりました)。
階段を登って受付を済ませて、最初の建築は“向月亭”。この建物と庭園は不昧公の弟・為楽庵の好みにより造営。御抹茶をいただく際に上がることができる建物から正面には市街地を見下ろす景観が味わえますが、かつての絵図には穴道湖の眺望まで描かれていたそう。

そしてその奥にあるのが茅葺屋根の草庵風の茶室“菅田菴”。正しい園路は、苔の園路の後に現れる御成門(現在は閉門)から入って、次の“御風呂屋”に至り、そしてこの菅田庵に下ってくるルート。お茶室の後に向月亭に至って、開放的な庭園が眺められた——という流れ。

てことで、菅田庵から階段を登って“御風呂屋”へ。こちらも茅葺屋根で、目の前には露地庭が広がり一見れっきとした茶室なんですが…待合兼その名の通り浴室、それも蒸し風呂。茶室本体の前に蒸し風呂がある建物は初めて見た気がする。茶会に蒸し風呂が取り入れられていた…?現代に置き換えると茶会にサウナ?サウナ茶会…!?なお当初はこの御風呂屋も菅田庵・向月亭とともに旧に指定されたそうですが、現在は範囲外。

…松平不昧公が自ら作庭も指図したとされますが、ここでは氏が連れてきたという出雲流庭園の祖・沢玄丹の名前が出てこない。確かに菅田庵・御風呂屋の露地は“出雲流庭園”とは全くテイストが違う。

で、思ったのは…赤い小さな飛び石を配し、また赤土を敷いている点はすごく重森三玲っぽい——。は作庭家として名を馳せる前の全国の庭園測量調査においてこの菅田庵も調査しています。重森三玲のあの作風…オリジナルなのかと思っていたけど実は原点がここにあったりするのかも。

それだけじゃない。京都の名作庭家・七代目小川治兵衛は、延段(石敷)や沓脱石に丸瓦をアクセントに用いるデザインを好んでいた——と教えてもらったのですが、このデザイン。江戸時代の菅田庵の庭園にもあった。更に他の松平不昧ゆかりの茶室(“観月庵”)の露地でもそのデザインが取り入れられていた。たまたまかぶっただけというか、意識して見直せば全国の他の江戸時代の庭園にもあるのかもしれないけど——こういう気づきは嬉しいなあ。

眺望にまで関わるこれだけの敷地、当然個人が保存し続けることは容易ではなく。今回の修復は70年ぶりの大規模修復だったそうで、修復以前からの見違えぶりは松江市の公式サイトで公開されているのでそちらもぜひチェックしてみてください。“殿”から賜った空間を維持し続ける家臣。なんでもかんでも税金と言える時代じゃないけど、自治体の支援の下でも維持し続けられてほしい庭園と建築。

(2020年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR山陰本線 松江駅より約3km(駅周辺にレンタサイクルあり)
松江駅より路線バス「菅田町」バス停下車 徒歩7分

〒690-0824 島根県松江市菅田町106 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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