桃山時代から続く豪農・庄屋屋敷の庭園と、季節には約50万本もの花菖蒲や新品種のアジサイが見られる名所。
加茂荘花鳥園について
「加茂荘花鳥園」(かもそうかちょうえん)は桃山時代から続く当地の豪農、大庄屋・加茂家の庄屋屋敷と、その敷地に開かれた動植物園。静岡県ではあじさいや花菖蒲の名所として知られます。2020年2月に訪れた際の写真なのでアジサイ・ハナショウブの写真は一切ありませんが…庄屋屋敷と連なっている温室では冬場でも様々な花が咲きほこっていた。
そして自分が紹介するとなると、花よりも豪農屋敷とその庭園…に興味津々。温室、花菖蒲園の後に位置するのが“庄屋屋敷 加茂荘”。浜松城主だった頃の徳川家康からの書状を含む古文書「加茂家文書」は文部省資料館に保存されているそうで、江戸時代には掛川藩政にも影響を与える大庄屋に。
現在残る長屋門、主屋一階、納屋、厩は江戸時代中期の1773年(安永2年)の建築で、主屋の2階は明治時代に増築されたもの。一部、近代和風建築っぽい意匠があるなと感じたのは実際近代に手が加えられた部分なんだと思う。
そしてこの庄屋屋敷には2つ庭園があります。まずは京アニ作品『氷菓』にも登場した池泉鑑賞式庭園。山から流れてくる水の溜池のような役割も果たしていますが、屋敷の三方から中央に亀島が眺められます。なんかあんまり見たことのないタイプの池泉庭園。
そして大座敷の奥にあるお庭。苔や笹、ハランといった緑と石灯籠や庭石が点在。現在は菖蒲園や池泉庭園と比べれば地味なお庭かもしれないけど、その踏分石の大きさからは加茂家の影響力の大きさが伝わってきます。
そして花菖蒲園は日本国内トップクラスの規模をほこり600品種50万本もの花菖蒲が保存・栽培。そのきっかけになったのが戦後の農地改革で耕作地を大幅に失いその権力を失う中で、元々栽培していた菖蒲園を拡張したところ地元の名所として親しまれるようになったという。
現在のご当主である園長・加茂元照さん自ら園芸研究家であり、温室ではアジサイをはじめとした品種改良にも取り組んでいて新しい品種・珍しい花々を見ることができるのもこの花鳥園の特徴。ちなみに…これまで『掛川花鳥園』には行ったことがあって(フクロウを見に。笑)、全国に“花鳥園”があるのも知ってはいたけど、創業者が加茂家であり創業の地がこの加茂荘なんですね。初めて知った…。(神戸や松江は現在他社が運営)
静岡にこんな豪農屋敷がまだ存在したのか…と今更ながら驚いたんですが、なんで文化財になっていないんだろうと思ったら「文化財指定されると管理上のルールが増えるから」。補助無しで進化し続ける、現在進行系の歴史的建造物というのもまた面白い。今年はこの季節に行くのはかなわないけど、来年以降はこの時期に帰省して見に行こう!
(2020年2月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)