浄居寺庭園

浄居寺庭園について

「常牧山 浄居寺」（じょうこじ）は山梨県北杜市にある臨済宗妙心寺派の寺院。その日本庭園は北杜市指定名勝の文化財庭園で、日本で二番目に高い山“北岳”の風景をのぞむことができます。

京都の世界遺産の庭園の作者・夢窓疎石の作庭と伝わる庭園として以前紹介した山梨市・牧丘町の『浄居寺庭園』。名前を同じくするこの浄居寺も、その名のルーツは山梨市の浄居寺にあります。

自治体は北杜市ですが公共交通機関でのアクセスはJR韮崎駅から。北杜市の浄居寺の前身『大龍寺』が現在地に移ったのは桃山時代の1581年（天正年間）、当時の住職は武田信玄の甥にあたる麟岳という和尚で武田勝頼にも縁があったとか。
しかしその直後に甲州征伐により織田/徳川/北条軍により焼かれ廃寺に。そののち、寛永年間（1642年）に「浅尾堰」が完成して新たな村（浅尾新田村）が開かれた際に大龍寺が再興。中興の祖・大器玄広和尚が住職をつとめていた『法泉寺』は武田晴信が定めた“甲府五山”の一つで、開山は夢窓疎石、武田勝頼の菩提寺でもあります。

再興された後に、やはり廃寺同然に荒れていた牧丘の浄居寺の名跡を継ぐことを許され、現在の寺名となったそう（＝牧丘の浄居寺もその後再興されて現在へと至る）。牧丘の方は鎌倉～室町時代の創建なのでそれよりは新しいですが、立派な庭園と「平岡勘三郎親子像」が北杜市の指定文化財となっています。

「平岡勘三郎親子」＝平岡氏は元は武田氏に仕えた武家で、江戸時代には代々甲府代官職を務めました。平岡治郎右衛門和由、平岡勘三郎良辰の親子の在任中に前述の「浅尾堰」が完成し、新田経営にも支援を惜しまなかったことで地元の人に支持されたそう。平岡親子は甲府周辺各地に新田を開発し、集落によっては水神さまとして祀っている地域もあるとか。

本堂・客殿の奥に、裏山の地形を活かした池泉庭園が広がります。形式としては本堂が主なビューポイントとなる池泉鑑賞式庭園なのですが、だいぶ広く大きい。時代や池泉の形は違えど、山梨県の国指定文化財庭園『恵林寺庭園』並のスケールの大きさ！

本堂側から見て右手側には金ヶ岳の山並み、正面～左手側に築山をもうけ、石橋の向こうに立石を中心とした石組があります。池の手前にはもう一つのビューポイント、平たい“礼拝石”があり、築山の上の庭園を見下ろす場所には座禅石も残ります。作庭時期は創建と同時期の江戸時代初期と推定されていますが、その作風は夢窓疎石が甲斐国に残した作風が感じられます。

鑑賞式庭園ではありますが、築山の建物の向こう正面（立石のあたり）に回らせてもらうと、南アルプスにそびえる“日本で二番目に高い山”北岳の3,193メートルの山並みが真正面に見えてド迫力！庭園の“借景”ではありませんが、こんな大きな山の風景をのぞむ庭園はなかなか無い…。
更に築山上の林は奥にもまだまだ境内は続き、この庭園へと注がれる山の水がトクトクと流れる水路や歴代ご住職の墓所などがあります。

歴史的な猛暑の中で、地方の（決して全国的に有名というわけではない）庭園…にしては（←と言うと失礼かもしれませんが…）、とーってもきれいにされていたのが印象的だったのですが、庭園だけでなく山が整えられている姿も印象的で（今後、よりきれいにしていきたい想いや計画があるのだとか）。
更に参道を歩いているとこの山の水源が（コンクリート舗装がされていない）昔ながらの水路で、寺院の前に広がる水田へと水が送られている姿も見ることができて。庭園だけでなく、お寺を取り巻く「ランドスケープ」にも歴史や人の想いが感じられる――そんなお寺さん！

ちなみに門前には、東京のガスアズインターフェイスが2023年に開いた現代アートギャラリー＆複合スペース『GASBON METABOLISM』も。のどかな田園地帯に若い世代が集うギャラリーが現れて驚く。アート目的でこの地に訪れた方にもぜひ立ち寄って欲しい庭園！

（2024年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。）