大和三名園の1つ。大名茶人・片桐石州が作庭の奈良盆地の風景も美しい庭園。国指定名勝&茶室が国重要文化財。
慈光院庭園について
「慈光院」(じこういん)は大名茶人で茶道石州流の祖・片桐石州(片桐貞昌)により江戸時代初期に創建された寺院。
当時石州により作庭された庭園が国指定名勝で、同じく石州作の『當麻寺中之坊庭園』や千利休作庭の『竹林院群芳園』と“大和三名園”と並び称されます。庭園と同時に造られた茶室・手水鉢、書院が国指定重要文化財。
2021年9月、約5年ぶりに拝観しました!まずはその歴史について。1663年(寛文3年)に石州が父・片桐貞隆(片桐且元の弟)の菩提寺として建立。石州が茶室“高林庵”を寄進した京都・大徳寺から玉舟宗璠(大徹明応禅師)を招き、以来臨済宗大徳寺派の禅寺として現在に至ります。
当時江戸幕府四代目将軍・徳川家綱の茶の湯指南役を務めた石州はこの慈光院を“境内全体が一つの茶席”として造営。なのでそれを意識してみるとお寺としては変わった順路・構造になっている(初めて訪れた時はそんなこと意識もしなかったけど)。
表門をくぐって山門へ至る石畳も露地庭園の延段…って感じで。二重構造の特徴的な山門“茨木城楼門”は石州の故郷・摂津茨木城から移築されたもので、写しが山口県の文化財庭園『山水園』にあります。
茶道流派の祖が建立した寺院、境内全体が茶席――という場のコンセプトの本質的価値を少しでも味わうために、拝観の際は書院でお抹茶を一服いただけます。
で、お茶をいただきながら眺められるのが、国指定名勝の庭園と奈良県景観資産にもなっている奈良盆地・大和平野の眺望。京都や奈良中心部と比べて賑やかな空間では無いので…しばらくぼーっと座って眺めていたくなる、そんな庭園と風景。
大徳寺の庭園と言えば白砂と石の禅の庭…ってイメージがある一方で、慈光院の庭園はなんといってもツツジやサカキ、椿などの混植の大刈込~その周囲のサツキの刈込。背景の高木と相まって自然で心安らぐ景観を作り出している。(なお白砂のエリアも以前はもっと広かったみたい、雨で少しずつ削られてきてるのかな)
そして東側へ開けた大和平野の眺め。近景が庭園として、中景に奈良盆地、そして遠景に“大和青垣”と呼ばれる奈良の山々が。
この眺めも現代においては住宅開発が進み現代的な建物ができ、それらを遮蔽する為に高木を育てて…という努力をお寺さんはされているのですが。個人的には“今ある街の風景”もまた一興と思っているので…このロケーション・眺望でじゅうぶん唯一無二な存在!
書院の一角には二畳台目の茶室“高林庵”とその外には露地、そして本堂の正面にあるのが三畳の“閑茶室”。書院の茅葺屋根と苔むした中庭の雰囲気も良い。
あと拝観を終えて少し東側へ歩いた先、川を渡った辺りから慈光院を眺めると小高い丘の茅葺き屋根の建物がすごく風情があって…すごくいい(丘の手前の大きな池も古くから“慈光院蓮池”と呼ばれ、庭園の一部として考えられていたとか)。
ご住職からお聞きしたお茶の話もすごく面白かった…自分なんかは“今の風景もまた一興”なんて今あるものに寄せてしまうけど、“守る”為には強い信念がやはり必要なのだと思う。次回はまた春、刈込に花が咲く頃に訪れたい!
(2016年5月、2021年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)