持宝院庭園

Jihoin Temple Garden, Kurashiki, Okayama

実は庭園に始まり庭園に終わる“児島ジーンズストリート”。現代の京都の名造園家・北山安夫が作庭した2つの庭園。

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持寶院庭園について

「巖崎山 大雄寺 持寶院」(じほういん)は倉敷市・児島のメインストリート“児島ジーンズストリート”沿いにある真言宗御室派の別格本山寺院。児島霊場八十八箇所第26番。境内に“平成の小堀遠州”とも言われる京都の作庭家・北山安夫さんにより作庭された庭園があります。

“ジーンズの聖地”として有名な倉敷市・児島。これまで国指定重要文化財『旧野﨑家住宅』など“塩田王”野﨑家ゆかりの庭園をいくつか紹介しましたが、もう一つ見ておくべき庭園が…と言っても児島に初めて訪れた2019年の時は知らず、後から知って。2021年春に初めて拝観。

現在は新しさが感じられるお寺ですが、奈良時代の738年(天平10年)に高僧・行信僧都により創建されたと伝わる古寺。現在見られる建造物のうち、山門から正面を見て右手の客殿は江戸時代初期の建造物とのこと。

北山安夫さんにより作庭された主庭園は2箇所あります。まずは客殿から見て正面、そして本堂・観音堂の前にある石庭。客殿から見て一番手前には亀島(同じ横の並びにあるソテツは鶴なのかな?)、中央にペタッと寝かされた白い巨石。最奥には複雑に石が組み合わされた空間は此岸と彼岸の間にある“賽の河原”が表現。

この“賽の河原”は中に入っていくこともできる。遠目には入っていいのかな?という感じがするけど、近づくと飛び石があり、その先の菩薩像の前にお賽銭箱が置いてあるので入って歩かれることを想定されていることがわかる。
静岡・浜松の『龍雲寺庭園』でお聞きした“これからの時代は参拝者が入ってみたくなるお庭が必要”――みたいな話にも繋がるし、“荒々しい起伏ある石組”と“ゆるい起伏で、入っていいよという仕掛け”がなされていて、すごく面白い。

もう一つの主庭園が、池泉回遊式庭園の“持宝庭”。こちらも巨石や奇石が多く用いられた迫力ある庭園なんだけど、池の前に腰掛待合のような席もあったりと先の庭園よりは“安らぎの空間”という印象。見るからに樹木もまだ若いので、10年・20年後にはまた全く違う味のある庭園になっているんだろうな~。

メインのお庭はこの2つなのですが――庭園を見ている自分にお寺の関係の方が声を掛けてくださり、通常非公開の客殿内に2つ坪庭を見せてくださいました。
これがまた!!京都『建仁寺』の“潮音庭”に負けるとも劣らない素敵な坪庭で…。お寺さんとのご相談の上、今回はその写真は紹介できないのですが、OKが出た時にまた紹介します(早く紹介したい)。

で、客殿前の主庭のペタッと寝かされた石。「涅槃図を表わしているのかなと思った」と告げたら、お堂の中に大きな(白いお釈迦様が横たわった)涅槃図が掲げられていた。本当にそうかどうかは北山安夫さんの口から出ない限りはわからないけれど――。

…実はこの日、偶然にも京都から北山造園さんが作業しに来られていた。お寺の方に「この後親方も来ますよ」とおっしゃっていただいたけど、自分もその後の都合(試合)があったので…お会いすることはかなわず。惜しい。この持宝院の庭園はまだ完成形ではないようなので、またマリンライナー乗った時には途中下車して訪れたい!

(2021年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR瀬戸大橋線 児島駅より徒歩15分(*駅にレンタサイクルあり)
児島駅より路線バス「児島市民交流センター前」バス停下車 徒歩5分

〒711-0913 岡山県倉敷市児島味野2丁目5-8 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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