西田天香の開いた“奉仕団体”の本部一帯の東山山麓の岩壁を活かした池泉回遊式庭園と、近代和風建築群。
一燈園・光泉林について
「一燈園」(いっとうえん)は京都の山科に本部をおく“懺悔奉仕団体”。本部のある一帯は「光泉林」(こうせんりん)と名付けられた村になっていて、200名ほどの方が共同生活を送られています。(※自らのリーフレットにも“宗教的生活共同体”という記載があるけど、宗教法人ではない。)
…という情報は事前に把握しておらず、この敷地内にある資料館『香倉院』に枯山水庭園があるっぽいな〜と思い、滋賀・大津から自転車で京都へ戻る際に初めて立ち寄りました。なおちょうど河井寛次郎や棟方志功に関する展示の最中。
明治時代後期、滋賀・長浜の商家に生まれた西田天香により創立された一燈園。西田天香は“自らは何も所有せず、すべてを捧げ奉仕活動をし、その中で与えられたもので生活する”という信条を持ったそう。今風に言うとミニマリストに通ずるものがある?なお、長浜市名誉市民第一号だそう。
当初は京都・鹿ヶ谷に提供された建物を拠点としていましたが、1928年(昭和3年)に現在地に移転。これもまた、繋がりある実業家から提供された土地だったそう。
山科駅から北東方面に1km程の場所にある光泉林。敷地内にはここで紹介する庭園や建造物以外にも、私立の学校・幼稚園・出版社・農業研究所・工務店に墓所などが集積していて、その中を“日本遺産”琵琶湖疏水が横切ります。
そして今回紹介する庭園(光泉林一帯)は本部で受付をすることで無料で見学可能(*香倉院は有料)。
本部の近くにある池泉回遊式庭園からはじまり、ゆるやかな斜面になっている敷地内を水の流れが通じていて全体が回遊式庭園のようになっている。そしてその途中途中には昭和8年建築の「礼堂」、昭和22年建築の「不二会館」、昭和33年建築の「光堂」という近代和風建築が立ち並びます。
思ったより広い敷地で、光堂が最奥かなあと思って引き返してしまったけど、その奥にある「王雲宮」「愛善無怨堂」のなんか面白そうな建物…。
この庭園の一番の特徴は、岩盤の斜面の景観。『ウェスティン都ホテル佳水園』の庭園を思い起こさせるけど、場所は違えどこの場所も東山山系の逆側の麓にあたる。京都・東山〜南禅寺界隈の庭園が好きな人なら一見の価値あり。作庭年代は資料等探しても不明だけど、前述の建物にあわせて昭和初期〜中期にかけて拡張されていったのだと思います。
1988年(平成元年)に開館した資料館『香倉院』は一燈園・西田天香に関する常設展示のほか、今回お河井寛次郎、棟方志功の他にも一燈園にゆかりある尾崎放哉、倉田百三などの作家の展示が行われているそう。建物前には枯山水庭園があります。
参考論文として貼った村田充八さんの論文ではなぜかブライアン・ウィルソンの名前も挙がる…素敵じゃないか。
(2020年6月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)