石川県知事公舎/金沢21世紀美術館すぐ近くの穴場庭園。加賀藩前田家の重臣“加賀八家”横山家が男爵だった大正時代に造営した近代和風建築と庭園。
石川国際交流サロンについて
「石川国際交流サロン」(いしかわこくさいこうりゅうさろん)は金沢市の代表的な観光地『金沢21世紀美術館』の程近くにある文化交流施設。加賀百万石を支えた“加賀八家”加賀藩家老・横山家(横山男爵家)の邸宅がそのルーツで、大正時代に造営された近代和風建築と日本庭園が活用されています。入場無料。
近年、一般公開などの活用方法を検討し始めたことが話題となっている金沢の洋館/近代建築『石川県知事公舎』。その並びにありかつては一つの大きなお屋敷だったのが「石川国際交流サロン」。現在はこちらも石川県立の施設として公開・貸室として運営されています(管理運営は公益財団法人石川県国際交流協会)。
その名の通り、日本人のみならず外国人との国際交流が施設の目的で、今回訪れたタイミングでは外国人のアーティストの作品展が行われていました。
横山家について。元は美濃国出身で前田利家に仕えた横山長隆を初代として、江戸時代には十三代に渡って呼ばれた加賀藩の重臣を歴任。“加賀八家”と呼ばれた名家の一つで、越中国の『富山城』の城代も務めました。
明治維新後、没落する武家も少なくない中で横山家13代目当主・横山隆平とその弟・横山隆興は鉱山経営に乗り出しこれが大当たり。薩摩藩・島津家らと並んで“三大鉱山華族”や“北陸の鉱山王”と呼ばれる程になり、隆平の息子・横山隆俊も鉱山経営を拡大したほか鉄道や銀行経営などに事業を広げ財を成しました。近代には金沢以外にも京都・南禅寺界隈にも別荘『智水庵』を営みました。
分家の横山隆興が金沢の寺町に別邸として現在の『辻家庭園』を造営したのに対して、横山家の本邸があったのが石川県知事公舎〜石川国際交流サロンの建つ一帯。現在残る建築は横山隆俊男爵の代、いずれも大正時代の終わり頃に建てられたもの。
時代の変遷とともに所有者も変わり、現在のように幾つかの施設に分割されていますが、数寄屋風書院造の伝統的和風建築をとてもきれいな状態で残る国際交流サロンは当時の面影を強く感じられます。
そしてそんな名家の庭園はもちろん美しく、海外で出版された日本庭園写真集にも紹介されたことがあるとか。四季の花々が咲く植栽はもちろん、近代の実業家の庭園はやはり庭石がすごい。地元・加賀や能登の石はもちろん、京都の銘石・加茂の七石、遠いところでは大分県の海石の巨石や小豆島産の御影石などが用いられています。石灯籠や伽藍石などの石造物もきっと由緒あるもの…。
近代京都を代表する庭師・七代目小川治兵衛(植治)が庭園を作庭した別邸に対して、横山男爵邸内の茶室の設計に携わったのはやはり近代の京都・関西で庭園や茶室を多く手がけた茶人・三代目木津宗詮こと木津聿斎。木津聿斎と小川治兵衛は作庭で何度かタッグを組んでいる…そう考えると、(京都の銘石が多く用いられていることを鑑みると)この庭園も植治に近しい京都の庭師が作庭に関与している…?
金沢の穴場の美しい庭園、ぜひ立ち寄ってみて。
(2023年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR北陸新幹線 金沢駅より路線バス「広坂・21世紀美術館」バス停下車 徒歩3分
JR金沢駅より2.5km強(徒歩30分強/駅周辺にシェアサイクルあり)
〒920-0962 石川県金沢市広坂1丁目8-14 MAP