
聖徳太子により創建され、太子作の品々や国指定重要文化財の仏像11体を所蔵する名刹。美しい枯山水庭園“石馬の石庭”や紅葉の名所として人気の参道も◎!
石馬寺庭園「石馬の石庭」について
【土日祝のみ拝観可】
「石馬寺」(いしばじ)は滋賀県東近江市にある臨済宗妙心寺派の禅寺。飛鳥時代、聖徳太子により建立されたと伝わる古刹で、国指定重要文化財の仏像群をほこるほか、美しい枯山水庭園「石馬の石庭」があります。昭和時代中期、京都の造園家・小川寿一の作庭。また紅葉の名所としても人気。
「近江商人発祥の地」として大きな商人屋敷が立ち並び、国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されている歴史的な町並み『五個荘金堂』。その北西~西部側にそびえる繖山(きぬがさやま)には複数の「聖徳太子ゆかりの寺院」が残ります。紅葉の名所として人気『教林坊』もそのうちの一つで、同じくこの石馬寺も聖徳太子により創建と伝わる寺院。最も近い五個荘の公開施設『金堂まちなみ保存交流館』からは参道まで1.5km(徒歩20分)程の距離。
その歴史について。創建は飛鳥時代の594年(推古2年)。本堂などの建造物は(教林坊やこの地域の代表的な寺院『観音正寺』の様に)山の中腹にありますが、石段を登り始める手前にある「石馬の池」「太子駒つなぎの松」も聖徳太子ゆかり&寺名のゆかりのスポット。
奈良以外にも霊地を求め近江国・繖山を訪れた聖徳太子。それまで乗っていた馬(駒)がこの地で歩みを止め動かなくなったので、山麓の池のほとりにあるマツの木に繋ぎ止めて山中へと歩を進めます。
やがて下山すると、その馬は石になって池に沈んでしまっていたとか。その霊的現象を見て、この地には霊気(パワー)が宿っていると感じ、この地に道場を開くことを決めます。寺名もそのエピソードが由来で、難読な山号の「御都繖山」(ぎょとさんざん)もその際に名付けられたもの。現在パンフレット等に使用されている「石馬寺」の字も聖徳太子直筆と伝わる扁額に記されているもの。
時を経て、南北朝~室町時代には近江国の武将/戦国大名・佐々木氏、六角氏によって庇護。しかし戦国時代には織田信長が六角義賢を打ち破った「観音寺城の戦い」のあおりを受け石馬寺の伽藍も全て消失。
江戸時代に入ると徳川家康によって門前に高札が立てられ、復興が始まります。拝観受付のある寺務所・方丈建築は1634年(寛永11年)に江戸幕府三代目将軍・徳川家光の上洛にあたり造営された御茶屋御殿(伊庭御殿)を移築したという築約400年の建築。またその再興の過程で、宮城・松島の国宝寺院『瑞巌寺』の雲居希膺国師が中興の祖に招かれ、天台宗から臨済宗の禅寺へと改宗。江戸時代以降は前述の「五個荘金堂」の近江商人にも信仰され、「三方よし」を最初に掲げたと言われる中村治兵衛や近江商人屋敷が公開されている外村家、そして庭園流派『鈍穴流』の祖・勝元鈍穴の墓所も残ります(※後述の庭園は鈍穴流とは別の方)。
その築約400年の大方丈や築約300年の本堂は文化財ではありませんが、石馬寺は国指定重要文化財の仏像を11体も有します(阿弥陀如来座像、十一面観世音菩薩立像、役行者大菩薩脇立ち前鬼・後鬼像など)。その他、東近江市指定文化財の仏像や仏画、そして聖徳太子自らの作と伝わる「聖徳太子馬上像」「聖徳太子合掌像」も…。中でも「大威徳明王牛上像」は昭和の随筆家・白洲正子が『かくれ里』の中で絶賛したという仏様。
そんな重要文化財仏像群が拝観できる宝物殿(大仏宝殿)と大方丈の間に枯山水庭園「石馬の石庭」があります。大方丈のお座敷から正面に眺める視点、そして方丈から宝物殿へと至る園路からの視点(平成年代の宝物殿の新築以前は渡り廊下がありました)、宝物殿の少し高い目線からの目線と複数の視点で楽しめる枯山水庭園。
一見、臨済宗の代表的な禅の庭『龍安寺の石庭』の様でもあり、でもそれと比べると手前の庭石は亀や鶴、奥の庭石は前述の「水牛」を表しているようでもあり、更に言うと雲居国師ゆかりの『松島』の風景を表現しているようでもあり、実は「いしば」にちなんで石の数が「1・4・8」になっているなのだとか…。作庭を手掛けたのは京都の造園家・小川寿一。昭和時代中期に複数の枯山水庭園/石庭を手掛けられている方。
そしてこのお庭のカッコいいポイントは園路から見て奥、お座敷右手にある自然の岩肌。岩壁沿いには池泉ももうけられている、枯山水庭園でもあるけど池泉鑑賞式庭園でもある。
石庭もカッコいいけれど、石馬寺は参道の雰囲気から最高…。長い石段の左右にはかつて子院や僧坊が立ち並んでいた時代の石垣がそのまま残る。そして石馬寺の反対側には、同じく推古天皇の時代に創建されたと伝わる『六所神社』や『雨宮龍神社』が。一面緑に囲まれた空間と苔むした石段・石垣、そして石鳥居・本殿の組み合わせがとてもカッコいい。東近江の名刹、ぜひ訪れてみて。
(一部情報提供:花文造園/2024年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR琵琶湖線 能登川駅より路線バス「石馬寺」バス停下車 徒歩15分
JR能登川駅より約4km(※駅前にレンタサイクルあり)
五個荘金堂の街並みから約2km
〒529-1401 滋賀県東近江市五個荘石馬寺町823 MAP
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